コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏、はコンサルティングファーム志願者の「駆け込み寺」として、マッキンゼー、BCGなどの経営戦略系ファーム、そしてアクセンチュア、デロイトなどの総合系ファームに、多くの内定者を送り出してきた。著書『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』では「ファームに入社した人の共通点」「具体的にどんな対策をすれば受かるのか」「入社後活躍する人とは」などについて、史上初めて実際に入社した3000人以上のデータを分析し「ファクトベース」で伝えている。
今回は、本書の内容から一部を抜粋・編集し、「ファームに入社した人の共通点」を紹介する。

一流コンサルファームの採用基準「自分が成長したい人」はNG→求められる「意外な」資質とは?Photo: Adobe Stock

「クライアントファースト」こそがコンサルタントの基本

 プロジェクトの成否を決めるのは「顧客満足度」です。高い顧客満足度を得るためには、プロジェクトのアウトプットがクライアントの期待値を超えなければなりません。

 クライアントは高額なコンサルティングフィーを払っているので、期待値は往々にして高いです。そして「あれもこれもそれも何でも解決してくれるはずだ!」と、期待値がうなぎ登りに上昇していきます。マネージャーやパートナーのうまいさばきで元々のスコープ(範囲)から明らかに外れた依頼は断ることができたとしても、現場では、要求を飲まざるを得ない場面もしばしばあります。

 このような厳しい状況の中でコンサルタントに必要なのは、「誠実さ」そして「クライアントファースト」の精神です。言い換えると「何としてでもクライアントの期待値を超えよう」と、自分をストレッチして誠実に真摯に愚直に取り組むことができるかどうか、「クライアントに満足してもらうことが自分の喜びにつながり、その結果として自身の成長も実現できるはずだ」と本気で信じられるかどうかが大事になってきます。

 つまり、利他的な人のほうが結果的に成果を出して、クライアントからの信頼を得ることができます。

「自分のために努力する人」は仕事を続けられない

「いや、自分の成長を一番の目標にすれば、結果的にクライアントも満足させられるはずだ」という反論もあるでしょう。しかし、このような利己的な理由から努力するタイプの場合、ある程度までの目標を達成すると、満足してしまいます。また、自分で設定した目標ほど簡単に引き下げることができ、大きな喜びや成果につながりません。結果的に、自分のことを第一に考える人はあまり成長しない(大きくストレッチできない)、もしくは成長したとしても継続させることができない傾向にあります。

 もちろん、「自分のため」だけに、そこからさらに高い目標を設定し直すことができる人、元々の目標を非常に高いところに設定し、それを達成する意志が強い人はまれに存在します。それはそれで、すごい才能です。しかし、コンサルティング業界がここまで大きくなった今、ファーム側はこのような「稀な」人たちだけで人員を賄うのは不可能だと考えています。

 ゆえに、誠実にクライアントのために仕事に取り組み、クライアントの満足を自分の喜びに変えることができる人、クライアントファーストで行動することにやりがいを感じる人が、コンサルタントとしての適性が高いと見られます。

 面接で過去のエピソードや職務経歴の話を聞くときも「クライアントのことを想像しながら仕事をしているか」をファーム側はチェックしています。

 直接顧客と接する仕事をしている人は、これまでやってきたことを面接で話すだけでも、評価されやすいです。一方、研究開発や生産・製造現場など「クライアント、顧客と接したことがない仕事」の場合、与えられた仕事をただやっていた人は評価されません。仮に直接接していないとしても、最終的に商品を届ける顧客(エンドユーザー)をイメージできているかが問われます。

(※本記事は、『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』から抜粋・編集したものです)