『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』が、若いビジネスパーソンや学生の間で静かな話題となっている。競争に疲れた心を癒してくれる本と反響を呼んでいる。2度目の増刷を記念して、著者の阿部広太郎さんの対談を企画した。お相手は『私の居場所が見つからない。』が若い女性の生きづらさを表現していると話題になっている川代紗生さん。2つの作品から浮かび上がるキーワードは、「人生の選択」「挫折と後悔」「自分の居場所」「承認欲求」「自己肯定感」など、どこか通じるものがある。予想通り、“同志”の対談は大いに盛り上がった。(構成/亀井史夫 撮影/小島真也)
「自分が認められるより、自分が他者を認めることが大切」(阿部)
川代紗生(以下、川代) 阿部さんは、何者かになりたいみたいな気持ちってあります?
阿部広太郎(以下、阿部) ないですね。もう諦めました。20代の頃とかは「何者かになりたい!」という気持ちはすごく強くありましたけど、今は自分の名前を生きていって、自分をどう変化させ、成長させていくかが大事なんだなと思ってます。何者かにというよりかは、自分らしさを広げていきたいなと。
人に認められたいという気持ちはもちろんあるんですけど、最近、自分が認めてあげることのほうが大事だなというのは思っていて。
川代 自分が認めてあげる?
阿部 自分が人を認めていく、ですね。
川代 ああ。
阿部 誰かの行いやふるまいや、何かを頑張ろうとしてることを認めて、リアクションしたり、応援したり、その気持ちに応えることがものすごく重要だなと思ってますね、最近は。
川代 うーん、確かに確かに。
阿部 それがあることによっていいチームになりますし、人とのつながりがより強固になっていくなと思うので、気持ちよく認めて、認め合えたらと考えています。
川代 私も周りの人の成功とか、周りの人の幸せとかを願うことで自分が救われる気持ちもあるんだなというふうにすごい思って。最初の勝ち負けの話じゃないですけど、ほかの誰かが活躍したことによって自分に還元される部分があるっていうふうに気づけると、すごく「私が私が」という気持ちが、もちろんゼロにはならないですけど、ちょっとだけ楽になるというか。
阿部 川代さんの本の中でお父さんが言ってましたよね。「勝とうとすることによって勝てなくなる人がいるよ」って。
川代 あ、そうなんです、そうなんです。
阿部 いろいろ経て思うのは、どちらも一緒に勝つということができないだろうかということなんですよね。
川代さんが言ってくださったみたいな、チームを作るだったり、新しい市場と言うと話が大きくなっちゃうんですけど、そういうものを生み出すだったり。今、みんなで勝てる方法はないのかを模索し始めている世の中だとも思うので。
川代 そうですよね。だから、大学生の子とかが悩みがちなのはやっぱり、お金を稼いでみんなで勝ったら、それが自分の手取りも増えるみたいな感覚があまりないからかもしれないですね。学校という世界の中だと、奪い合いみたいなのイメージが強いから、私も学生時代のほうが悩んでた気がするんですけど。大人になると、みんなで勝っていくほうが結果的に自分が得だなみたいなのがちょっとずつ分かるようになるから。
阿部 決まった枠組みの中で割り振られるものを待つしかないタイミングもあるし、もちろん自分の手元に多くあるほうがありがたくはあるけれど、今出来ることの中で最大限のことを心地よく頑張っていけるといいなと思うんですよね。
1986年3月7日生まれ。埼玉県出身。中学3年生からアメリカンフットボールをはじめ、高校・大学と計8年間続ける。2008年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、電通入社。人事局に配属されるもクリエイティブ試験を突破し、入社2年目からコピーライターとして活動を開始。「今でしょ!」が話題になった東進ハイスクールのCM「生徒への檄文」篇の制作に携わる。作詞家として「向井太一」「円神-エンジン-」「さくらしめじ」に詞を提供。Superflyデビュー15周年記念ライブ“Get Back!!”の構成作家を務める。2015年から、連続講座「企画でメシを食っていく」を主宰。オンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」では、2020年の「ベスト先生TOP5」にランクイン。「宣伝会議賞」中高生部門 審査員長。ベネッセコーポレーション「未来の学びデザイン 300人委員会」メンバー。「企画する人を世の中に増やしたい」という思いのもと、学びの場づくりに情熱を注ぐ。著書に『待っていても、はじまらない。ー潔く前に進め』(弘文堂)、『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(ダイヤモンド社)、『それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。