「そうだ、文章を書こう。」(川代)

――そろそろ時間が……。最後に、それぞれの作品をまだ読んでない人へ。

阿部 第3章の〈「キャプテン」に選ばれなくても ―何に「貢献」するかを決める―〉というところをぜひ読んでほしいです。僕の書いたのはチームの中で自分がキャプテンになりたいと立候補して、でも選ばれなくて、そこで先輩から、「腹割って周りの人はおまえに話せるのか?」と言われたというグサッと来た言葉なんですよね。
 学業にしろ、バイトにしろ、仕事にしろ、そういうふうに誰かに何か言われてしまうことは避けられないというか。強い言葉で言われて、すぐには理解が追いつかないことは起こり得ると思うんです。完全に無視しちゃっていいと思う他人の言葉は無視しちゃっていいんですけど、言葉を消化できるタイミングもあるよなと思っていて。
 今どんな環境にいる人でも、周りの人との人間関係で悩んだりすることはあると思うんですけど、そういう誰かとの関係性とかで悩んでいる人にこそ手に取ってもらって、気持ちの折り合いのつけ方のヒントがこの本から見つかるといいなと思っています。

――川代さんはご自身の本『私の居場所が見つからない。』について。

川代 私、今日、阿部さんが言ってくださった、「心の手当てをしているようなところがある」が、まさにそうだなと思って。
 私はこの本を書くまではずっと、自分がマイナスなような気持ちが強くて。承認欲求というと、「もっと私を認めて。分かって」と、ゼロからプラスに行く上昇志向みたいな、勝ち気な欲求みたいなイメージがあると思うんですけど、私の場合は、スタートラインからもうマイナスになってしまってて、マイナスの時点で大量の人に迷惑をかけまくってるから、どうやったらこのマイナスをゼロに持っていけるかみたいな気持ちがすごく強かったんです。
 だから、なんか「特別でありたい」みたいな気持ちもありつつ、その一方で、「普通になりたい」みたいな感情もすごくあって。そういう「普通になりたい」とか、「でも特別でいたい」みたいな矛盾したいろんな感情を書きながら、それこそ手当てしてたのかなという印象が自分の中であって。
 なので、なんかもう一言じゃ言い表せないような、「自分ってダメだ」みたいな、途方もない寂しさがあるような人が読んで、心の手当てができるような本になっていたらいいなと、今日お話を伺って改めて思いました。

阿部 僕は『あの日、選ばれなかった君へ』の最後を、「もうすでに君は自由だし、君が自分で作っていいんだよ」と締めくくったんです。川代さんも本の最後を「そうだ、文章を書こう」で締めてますが、文章に居場所が生まれるということを言いたかったのかなと思いました。

川代 確かに、書いて自由になるみたいな。

阿部 そうですね、それを感じました。

川代 編集の亀井さんの采配で、合い通ずる読後感になってるのでしょうか(笑)。

――それはあるかもしれません(笑)。

川代 いやぁ、でも本当に、どっちも売れるといいですね。ああ、届いてほしい。わー、阿部さんにあやかって、私も売れたいな(笑)。重版しますように!

人間関係で悩んでいる人に、ぜひ読んでほしい本川代紗生(かわしろ・さき)
1992年、東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。2014年からWEB天狼院書店で書き始めたブログ「川代ノート」が人気を得る。「福岡天狼院」店長時代にレシピを考案したカフェメニュー「元彼が好きだったバターチキンカレー」がヒットし、天狼院書店の看板メニューに。メニュー告知用に書いた記事がバズを起こし、2021年2月、テレビ朝日系『激レアさんを連れてきた。』に取り上げられた。現在はフリーランスライターとしても活動中。著書に『私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)、『元カレごはん埋葬委員会』(サンマーク出版)。