大衆の民意を反映している点で
生成AIは「そこそこ正しい」
では、「どうしたらトランプ大統領誕生を阻止できますか?」と生成AIに尋ねると、あまり良い対策が出てきません。
返事としては「トランプ氏の政策や行動の批判」「激戦州への戦略的なキャンペーン投資」「メディアとSNSを通じた広告」「若い世代と少数派の有権者の動員」といった当たり前といえば当たり前の選挙対策が並びます。
その対策の中で一つだけ目を引くものがあります。それが、「強力な対立候補の指名」という対策です。
ひとことで言えば、バイデン大統領よりももっと強い候補者をぶつける必要があるということなのですが、もうバイデン氏が民主党の候補というのは確定しています。
念のため「なぜ勝つのが難しいのに民主党はバイデン大統領を次の大統領選挙の候補に選んだのですか?」と聞いてみました。
すると、「スーパーチューズデーで選ばれたという事実」「他に有力な対抗相手が立候補していないという現実的な事情」に加えて「バイデン氏が一番民主党支持層を結束させるから」という答えが返ってきました。
生成AIの答えというものは、正しいのでしょうか?
実はここが面白い点です。生成AIには創造的な思考能力はありません。基本的にインターネット上にあふれるあまたの識者やメディアの意見を学習し、その要約をもっともらしくまとめてくるのが生成AIです。
そこからわかることがあります。生成AIが予測する選挙の結果は、そこそこ正しいはずなのです。なぜなら、大衆の民意をそのまま反映しているからです。
つまり世論はトランプ氏の政策が良くないことを知っていて、でもトランプ氏が一番選挙に勝てそうだから共和党の候補に選んでいる。
そして世論はバイデン氏が対抗馬として弱いことを知っていて、それでもバイデン氏以外に候補がいないと知っているので民主党の候補に選んでいる。それを生成AIが学習して、オウム返しに回答を返してくれているのです。
とはいえこの先、すんなりトランプ大統領誕生ということにはならないかもしれません。
おそらく秋の選挙に向けてSNS上にはAIを悪用したフェイクニュースが氾濫するでしょうし、中国やロシアの諜報機関がだまって選挙を見守るとも思えません。もう一幕か二幕、ろくでもないことが起きて、それでも11月にはどちらかがアメリカの新大統領に選ばれることが確実です。
トランプ氏が新大統領になれば、これまで予測されているようにまずウクライナ紛争がウクライナにとって理不尽な形で終結するでしょう。
また地球温暖化に関してはアメリカが政策を変更することで、世界の脱炭素の潮流が後退することになるでしょう。さらには自由貿易のルールがゆがめられ世界の経済成長が鈍化する危惧が懸念されます。
悪いことが起きるのがわかっているのに、悪いことが選択される。生成AIの誕生後の黎明期ともいえる今の時期、まだわれわれ人類は、生成AIを良い方向に使いこなすには未熟な存在のようです。
なぜ、AIが予測する悪い未来を回避できないのでしょうか?