2020年代の世界各国は
「自国の国益」中心主義
一つの事実として、20年前ぐらいと比較して2020年代の世界各国は「自国の国益」を中心に回っているという変化があります。
トランプ氏の掲げる政策はその象徴ともいうべきもので、アメリカをかつてのような偉大な国家にすることをゴールに掲げたうえで、大統領としてねじ曲げられるルールすべてをねじ曲げていこうというのが基本政策です。
それが、アメリカだけの行動なのかというとまったくそのようなことはなく、ロシアも中国も基本的に国益を中心に行動をしているという点ではまったく変わりがありません。グローバルサウスで存在感を高めているインドも、その意味では同じです。
これまでその対抗軸として国益ではなくより大きな世界や社会の利益を優先しようとしてきたのが欧州連合(EU)でした。一国の利益よりも27カ国が加盟するヨーロッパ全体の利益をどう優先するかが議論され、加盟国は個別にはむしろ国益を主張しづらい状況に置かれてきました。
ある意味でイギリスが2016年にEUからの離脱を決めたことも、世界が国益を中心に回り始めた予兆だったのかもしれません。
最近のEUを見ると、ドイツが脱炭素の理念から反する政策を掲げるなど、EU内部においても国益の方を重視する動きが強まっているようにも感じられます。
ではなぜ国益が重視されるように世界が変わったのでしょうか?
そう考えると、国益というものがその国にとっての全体最適ではないことにも気づかされます。トランプ氏が掲げる国益は、よく考えてみるとミシガン州やジョージア州、ニューメキシコ州の利益であって、ニューヨークやサンフランシスコで働くアメリカ市民から見れば、利益にならないことが多いのです。
要するに「一部の市民の声が力を持つ」という状況が過去20年間で世界全体でより強まったと見ると、この現象がなんとなく腹に落ちてきます。
実はこのことは、2010年頃にアメリカで危惧されていた未来予測と重なります。