「91歳の今が一番忙しい」長寿食研究の第一人者・永山久夫が語る、年を重ねるごとに生きる力がみなぎる秘訣91歳の現在も、元気いっぱいの永山久夫さん  Photo by Keiko Mohri

NHKのテレビ番組「チコちゃんに叱られる!」でおなじみ、食文化史研究家として長寿食を長年研究している永山久夫さん。91歳の今も、精力的に活動しています。昨年『紫式部ごはんで若返る 平安時代の食事は健康長寿食』(現代書林)を上梓。自身でも毎日食べている「長寿食」や「健脳食」をテーマに、元気の秘訣を聞きました。(取材・構成/フリーライター 水口陽子)

大学時時代に肺結核にかかって
「体は食でできている」と気づく

――91歳の現在も「食文化史研究家」として国内外で活躍されています。食文化を仕事にするようになった経緯を教えてください。

 少々昔話をしますと、私の生家は福島県で三代続く麹屋です。健康食品として数年前からブームになっている麹ですが、私にとっては子どもの頃から身近な食材です。東日本大震災の際に家は壊れましたが、麹蔵は今でも残っています。

 村の人はみんな、うちの麹で、みそやしょうゆ、甘酒をつくっていましたし、私も親父のつくった味噌汁や甘酒を毎日食していました。

 甘酒は「飲む点滴」といわれていますが、運動で体を使ったときや、スタミナ切れしたときに飲むとすぐ元気が出て即効性があった。発酵食品という言葉は知らなくても、その健康効果は当時から自分の体で知っていましたね。

――麹のおかげで、子どもの頃から丈夫だったわけですね。

 ところが、大学に入学してすぐに肺結核にかかって4年間くらい療養施設にいました。施設の窓の外を村人が鼻をつまんで急ぎ足で通っていく、といったこともありました。当時は不治の病といわれていてね。治療法はビタミン剤を飲んで静養しているだけです。

 でも、死にたくなかった。自分で治すしかないと健康に関する本を読みあさりましてね。そこからですよ、「体は食でできている」と身に染みたのは。

 毎日すったニンニクを食べ、具だくさんのみそ汁を飲み、体の調子がよいときはキノコや山芋を取って食べて……。本に書いてあった滋養食材を積極的に取ることで、体力や免疫力が復活したと思います。

 病弱だった体はよみがえったように元気になって、肺結核は寛解しました。以来大きな病気にかかったことがありません。