紫式部など平安の才女が
好んで食べていたものは?

――もう一つ研究されているのが健康長寿を保つための食「長寿食」です。和食は長寿食だといわれていますが、おすすめは何でしょうか。

「胡豆魚梅参茶(ごまさかうめじんちゃ)」って、耳にしたことがありますか? 不老長寿成分がたっぷりの「胡麻」、長生きに役立つイソフラボンが含まれている「大豆」、血液サラサラ効果のあるサバ、イワシ、マグロといった「青魚」、難逃れの「梅干し」、老化予防効果のある「人参」、そして日本人の長寿記録に大きな役割を果たしている「緑茶」。

「ごまさかうめじんちゃ」は、覚えやすいように私が名付けた「長寿食」のお題目です。私は毎日唱えながら積極的に食べていますし、皆さんにもぜひ食べてもらいたい。

 魚は料理が大変ですが、サバ缶なら骨まで食べられます。マグロは刺し身なら簡単に食べられるでしょう。人参は細かく切り、バターを1片加えて炊き込みご飯にします。

「緑茶」はお茶に含まれるテアニンが脳をリラックスさせ、さらにカテキンは細胞を酸化させて老化を促進させる活性酸素を減少させることが分かっています。田舎のおばあちゃんのティータイムのように緑茶で一服。白菜漬けやぬか漬けなど発酵食品のお茶受けがあればさらによし。

――永山さんは各地の「長寿村」を巡っているそうですが、これまでで印象的だった地方の長寿食はありますか?

 北海道から沖縄まで15年ほどかけて訪ね歩きましたが、西に行くほど豚肉がよく食べられていました。豚肉は、古くから滋養強壮や疲労回復の食べ物とされ、また脳の働きを活発にするといわれています。薩摩の西郷隆盛や大久保利通も豚肉を食べて明治維新を成し遂げました。沖縄の人もよく豚肉を食べるので、長寿者が多いですね。

 以前会った100歳を超えたおばあさんも、豚肉を食べていましたね。そして「年は取るまいよ、ワシの寝床には猫も来ない」と残念がっていました。艶っぽい話でしょう。まだまだお若いんですよ。きっと前頭葉も衰えていないのでしょう。豚肉のおかげかなと、感心しました。

――ありがたいことに、私たち日本人は昔から長寿食や健脳食を好んで食べてきたのですね。

 そうともいえますね。拙著の『紫式部ごはんで若返る・平安時代の食事は健康長寿食』(現代書林)に書いたのですが、紫式部の好物は丸干しのイワシ。さらに大豆の煮豆や、きな粉をご飯にかけていました。イワシも大豆も健脳食であり、長寿食です。

 これらを取って制作能力をフルに発揮したのでしょう。平安時代の才女たちも、現代の我々も、同じものを食べ続けているのです。

――和食こそが、先生のいうブレインフード、健脳食や長寿食をたくさん取ることができる食事であると、お話を聞いて確信できました。

 世界の富裕層が、年を取ったら日本で暮らしたがっているそうですよ。和食を食べて頭脳明晰で長生きをしたいというわけです。幸い私たちは普通に食事をしていれば、ブレインフードが取れるんですから実に運がいい。

 いま、私の研究が、世界8カ国に配信されています。これからの私のライフワークは、素晴らしい健脳食かつ長寿食である和食を、世界中の人にさらに広めていくことだと思っています。