たくさんの犬写真はイメージです Photo:PIXTA

大切なパートナーとして、さまざまな形で人間との絆を築いてきた犬たち。そんな大事な存在がそう遠くない未来に私たちのそばから姿を消そうとしているという。なぜ国内の犬の飼育頭数が減少しているのか?「ヒトと動物の関係学」の研究者が警鐘を鳴らす。本稿は、林 良博『日本から犬がいなくなる日』(時事通信社)の一部を抜粋・編集したものです。

ファミリーブリーダーが消えると
なぜまずいのか

 日本では犬の飼育頭数が減ってきており、このままだと今後も減っていき、2040年には半分ほどの数に減ってしまいます。そして、犬の数が減る遠因としては、人口減少や共働き世帯の増加が考えられます。

 しかしながら、犬の飼育頭数が減る、より核心的な要因は、別にあると私は見ています。それは、「日本から、犬の交配や繁殖を担うブリーダーの人たちが姿を消していくから」にほかなりません。

 ブリーダーには大きく2種類があります。よび方はさまざまありますが、この本では「商業ブリーダー」と「ファミリーブリーダー」とよぶことにします。

 商業ブリーダーとは、ブリーディングによって生まれた仔犬を販売するなどして、生計を立てているブリーダーたちのことを指します。商業ブリーダーには、企業を設けたり企業に属したりして、組織的な活動をしている人が多くいます。

 一方、ファミリーブリーダーとは、ブリーディングによって生計を立てることを意図せずに、犬の繁殖をおこなっているブリーダーたちのことを指します。

 冒頭で、日本から、犬の交配や繁殖を担うブリーダーの人たちが姿を消していくと述べましたが、とりわけ姿を消しつつあるのが、ファミリーブリーダーの方々です。ブリーディングをやめてしまう方が多くなっているのです。

 ジャパンケネルクラブは、同クラブ会員のブリーダーたちの年間飼育頭数や登録者数の状況を把握しています。2004年には、年間繁殖頭数が1頭だったブリーダーは、約2300人、2頭では約3700人、3頭では約4700人、4頭では約4600人、5頭で3500人でした。6頭以降は頭数が増えるにつれて登録ブリーダーの数は減っていきます。

 では10年後の2014年はどうかというと、年間繁殖頭数が1頭だった登録ブリーダーは約600人、2頭では約800人、3頭では約900人、4頭で約700人、5頭で約500人となっています。全体的に激減してしまいました。これより多い頭数も含め、すべての年間飼育頭数においてブリーダー登録数が10年前を下回り、なかでも1頭から5頭くらいの小規模といえるブリーダーの登録数が減っているのです。年間で1頭から5頭くらいの少ない仔犬を繁殖させるのはもっぱらファミリーブリーダーですので、ファミリーブリーダーの減り方が深刻であるということができます。