なぜファミリーブリーダーの方々が、ブリーディングをやめてしまったのか。その大きな要因と考えられるのが「法律の改正」です。動物愛護管理法という法律が改正され、2006(平成18)年6月に施行されたことをきっかけに、ファミリーブリーダーたちがブリーディングをするための手続きが大変になり、ブリーディング自体をやめてしまったと考えられるのです。

 具体的には、多くのファミリーブリーダーがおこなってきた犬の繁殖活動が、「業」を営む行為であるとみなされるようになり、業としておこなうために必要な登録をしなければならず、「そこまでするのは大変だから、もうブリーディングはやらない」となってしまったようです。

「丁寧な繁殖の担い手」たちが
去ったあとに待ち受ける未来

 動物愛護管理法の改正が、本当にファミリーブリーダーがブリーディングをしなくなった原因となっているのか、より詳しく見て見ましょう。犬猫適正飼養推進協議会は、ブリーディングのさかんな地域である愛知県三河地区で聞き込み調査をしています。石山恒会長の話によると、ペットショップや商業ブリーダーの下(もと)には、数多くのファミリーブリーダーがいたものの、法改正によりいなくなってしまったということです。

 50年間にわたり商業ブリーダーとして活動を続けている方への聞き取りによると、その方は「店子」とよばれるファミリーブリーダー500人とつながっていて、ファミリーブリーダーの協力の下(もと)年間2000頭ほどの繁殖をしていたそうです。しかし、ほとんどの「店子」のみなさんがブリーディングをやめてしまい、組織が崩壊したといいます。

 やめた理由の大きな一つは、2006(平成18)年の法改正により登録が義務化されたためとのことです。「年間1回のブリーディングで2、3頭しか仔犬を繁殖させないのに、書類づくりを要求されるのは億劫だ」と嘆いていたファミリーブリーダーもいたといいます。さらに、ファミリーブリーダーにはベテランの方が多く高齢化も進んでおり、2012(平成26)年の同協議会の調査では後継者の有無について聞いたところ、後継者がいると答えた方は32パーセントにとどまったとのことです。