通学区域の拡大に高校無償化で
最強国立一貫校の合格辞退者が続出
「筑駒の合格者が他の併願校に流れた結果、例年5人以下の筑駒の繰り上げ合格が、24年入試は数倍に跳ね上がった。逆に、開成の繰り上げ合格は例年60人ほどだが24年入試はほぼ半減。トップ校の繰り上げ合格の影響は大きく、各校で玉突きが起き、2月下旬まで男子は各学校で繰り上げを出すことになった」(首都圏塾幹部)。そこで、取材を基に、基本的に非公表である主要難関校の繰り上げ合格者数リストを作成した。
筑駒ショックの最大の原因は、同校が24年入試で通学区域を拡大したことにある。千葉県や神奈川県埼玉県などの合格者が結局、自宅から通いやすい開成や聖光学院、渋谷教育学園幕張(渋幕)などに流れたためだ。
ただし、“筑駒離れ”に別の副次的要因を指摘する声もある。「付け加えれば、東京都の高校授業料の実質無償化も少なからず影響しているだろう」と、四谷大塚の岩崎隆義情報本部本部長。
東京都は昨年12月、24年度からこれまで年収910万円未満の世帯が対象だった高校授業料助成の所得制限を撤廃、私立を含めた全高校の「実質無償化」を打ち出した。
「国立校と私立校のインフラの差や私立校の面倒見の良さを考えれば、私立高校3年間の授業料が実質無料になるインパクトは無視できない。今後、特に子どもが複数人いるような家庭にとって、私立中学を選ぶ追い風になるだろう」(岩崎氏)。
では、10カ月後に迫る25年入試はどうなるのか。全体的には、首都圏塾関係者は皆、25年入試も今年と同程度の激戦を予想する。そして、受験校選びで考慮すべきなのは、いわゆる「プチ・サンデーショック」だ。
「25年入試では2月2日が日曜日に当たり、例年この日が入試日となるプロテスタント系の青山学院の入試が翌3日にずれる。結果、3日に入試を行う慶應義塾湘南藤沢や立教池袋(1)、学習院(1)、明大明治(1)などの他の大学付属校の人気が上がる可能性が高い。逆に、青学と入試日がバッティングする明大明治(2)や学習院(2)、学習院女子Bが少し挑戦しやすくなるとみている」と広野氏。例年以上に受験校選びに頭を悩ませる親子が増えそうだ。