「外部プロ人事」を迎えるうえでの大前提とは?
ここで、大前提としてお伝えしたいのは、「『外部プロ人事』のジョインで、万事がうまく進むとは限らない」ということです。どれだけ優秀なスキルを持った「プロ」を迎え入れても、事前の「要件定義」次第では成果が出ないことも往々にしてあるからです。
ここで言う「要件定義」とは、「誰に・何を・どれだけ・どんなかたちで任せるか」を指します。日本従来のメンバーシップ型雇用では、社員一人ひとりの業務を細かく定義する必要はありません。そのため、「外部プロ人事」に対しても、「要件定義」を苦手とする企業が多いです。
しかし、「外部プロ人事」をはじめとした外部人材の活用の肝は、まさに、「要件定義」にあります。たとえば、「人事メンバー(人事部所属の正社員)の人数が足りないから」と、ただマンパワー的に外部人材を動員しても、期待した成果が出ないことが多々あります。どのような課題があり、その解決にはどのようなスキルや経験を持つ人材がいればよいか――その“細かな要件定義”こそが、成果の量に比例するのです。
そして、成果につながる「要件定義」を行ううえでの有効的な手法として、「課題発見アプローチ」を、私はお勧めしています。これは、目の前に見えている問題や課題に対してアプローチする方法(課題解決アプローチ)と違い、まだ見えていない潜在化した問題を「課題」として設定し、その解決方法を探るアプローチです。
たとえば、「退職率が高い」事実を受けて、給与などの待遇改善に着手するのが「課題解決アプローチ」。「退職率が高い」事実を受けて、退職理由には挙がってこない根本原因を探り、仮説と検証を行うのが「課題発見アプローチ」です。課題解決アプローチは解決するべきポイントを特定しやすい一方で、“その場しのぎ”的な対策になりやすく、根本解決につながらないリスクがあります。「課題発見アプローチ」は、課題が目の前に見えているわけではないため、実現がなかなか難しいですが、より高い効果の期待できる「要件定義」につながります。
このような、要件定義を念頭に置いた「外部プロ人事」の活用で、人事担当者は孤独を感じることなく、学び深めることができます。各組織の成長を促進するために、人事部門は「外に目を向ける」ことも大切。外部人材である「プロ人事」の活用は、人事部門が情報をインプットするための方法のひとつにすぎませんが、自社組織外の知識とリソースの活用で、各社の人事施策が前進し、成功していくことを、私は願っています。