「忙しすぎて本を読む時間がない」「1冊読み切るのに時間がかかる」「読んでも読んでも身につかない」――そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。本を読めばいいことはわかっているのに、自主的に読めない人もいるでしょう。
何の本をどう読み、どう活かしていくか――働くうえで必携のビジネススキルを良書から抜き出したのが『ひと目でわかる! 見るだけ読書』。本書は、コスパやタイパを重視する現代的な読書スタイルを重視する人にとっても、魅力的な読み解き&活用法です。たった「紙1枚」を見るだけで本の最も大事なポイントが圧倒的なわかりやすさで理解でき、用意したワーク1枚を埋めるだけで即スキル化できる1冊。それも1万冊の読書体験と1万人を教えてきた社会人教育の経験から、絶対に読んでほしい24冊+αを紹介。ただ、エッセンスをまとめただけでなく、読後には、紹介した本が有機的につながっていく仕掛けがあなたのビジネススキルを飛躍的に向上させます。

トヨタで学んだ「読書」で大切なことPhoto: Adobe Stock

トヨタ社員の基本動作

 トヨタ自動車株式会社(以下トヨタ)で働いていたとき、仕事で作成する資料はいつも「1枚」でした。企画書、議事録、報告書、分析レポート、上司との面談資料、等々。いかなる目的の書類であっても、できるだけA4もしくはA3用紙「1枚」にまとめてから、報告・連絡・相談・プレゼン等に臨む。これが、トヨタの働き方、ワークスタイルの基本でした。

Amazon社員の基本動作

 その後、実はAmazonにも同じような仕事上の基本動作、文化があると知りました。Amazonでは「1ページャー」もしくは「6ページャー」と言われていて、1ページャーがトヨタにおけるA4「1枚」、6ページャーがA3資料に近い位置づけだとわかってきました。

なぜ「1枚」にまとめるのか

 日米を代表する企業が、いずれも「1枚」を重視している。その理由は一体何なのか。日々、「1枚」にまとめながら仕事をするなかで見出した本質を、今回は1つに絞ってまとめます。

 一言でまとめれば、その本質は「考え抜けるから」。「1枚」で完結させるためには、あれもこれもと盛り込むことはできません。そのため、「いくつも原因がありまして」ではなく、「根本原因」を突き止めてそれだけを書く。あるいは「数多くの対策案を検討」すること自体は重要ですが、資料上は最も有効で現実的な「対策」のみを記す。

「1枚」という制約があることによって、自身の担当業務について自然と、もしくは半ば強制的に一歩も二歩も深く考えることができるようになっていく。だからこそ、「考えられる」ではなく、「考え抜ける」という言葉で本質をまとめました。こういった言葉を選ぶ力、言語化力、要約力といった国語力も飛躍的に高めることができます。

「1枚」仕事術を「読書」術に応用する

 さて、ここでようやく今回のタイトルにつながります。私は学生時代から活字中毒者で、ジャンルを問わずこれまで1万冊以上の本を読んできました。当然ながら、これだけ大量に本を読んでいると、いざ活用しようとなった時にすぐに思い出すことができず、また1冊1冊の読み解きも浅くなってしまいがちです。

 読書に関してこのような悩みを抱えて20代を過ごしていたのですが、ある時ふと、トヨタで学んだ「紙1枚」にまとめる技術を、読書に当てはめてしまえばよいのではないというアイデアが浮かんできました。

 本を読んだ後、得られた学びを「1枚」にまとめる。そうすれば、その過程で自身の読み解きについて更に考えを深めることができます。適切な言葉で要約する必要があるため、著者の意図や背景を深く読み解く力について高めることも可能です。

ドラッカーの名著を「1枚」にまとめて実践

 たとえば、以下は経営学の巨人・ドラッカーの『経営者の条件』という本の第2章について「1枚」にまとめたものです。

トヨタで学んだ「読書」で大切なこと

 この章は時間管理について書かれているのですが、こうやって「1枚」にまとめて繰り返し実践していくなかで、ドラッカーの言いたかったことをより深く理解し、何より日々の仕事で活かすことができます。身につけてしまえば、「何が書いてあったか忘れた」といった読書に関する典型的なお悩みからも解放されます。

 慣れてくれば10分ほどで作成できるようになりますので、今回の「1枚」を参考にしてもらいつつ、「1枚」読書まとめにぜひチャレンジしてみてください。

(本原稿は書籍『ひと目でわかる! 見るだけ読書』著者の書き下ろしです)