写真:読書,書店写真はイメージです Photo:PIXTA

キャリアアップなどを目指して本を読む、純粋に本を楽しむ……いずれの目的でも、読書は良い行動である。読書は大事だ、もっと本を読みたいと思っていても、「ついスマホに手が伸びてしまう」「他のことが気になって集中できない」という理由で、読書が進まないとお悩みの方も多いのではないだろうか。本記事では“ナッジ理論”に基づいて「なかなか一冊読み切れない」「以前よりも量が読めなくなった」という人が本を読む時間を増やし、読書を続けやすくなる具体的な方法を五つ紹介する。(アステル/ライター・認定NPO法人職員 てらこ)

「なかなか本が読めない」「読書に集中できない」悩みが
“ナッジ理論”で解決するかもしれない

 無料の動画コンテンツがあふれ、SNSの新着通知がひんぱんに届き……という現代社会において、「なかなか本が読めない」「読書に集中できない」現象は、多くの人が直面する問題だろう。「もっと本を読みたいのに、読めない」という悩みを解決するために役立ちそうなのが、ノーベル賞を受賞した行動経済学者、リチャード・セイラー氏が唱える“ナッジ理論”だ。

 ナッジ(nudge)は英語で「肘で軽くつつく」という意味。ナッジ理論とは、人々に何かの行動を強制するのではなく、ちょっとしたきっかけ(ナッジ)で人々が自発的に行動するように誘導する行動理論のことを指す。世界各国の公共政策において、人の行動を誘導したり、抑制したりするために導入されている。

 ナッジ理論を応用すれば、自然と本を読む時間を伸ばすことができるかもしれない、というのが本記事の趣旨だ。ここではナッジ理論の中でも特に、病院の受診率向上のために日本の厚生労働省が活用を勧めるナッジ理論のフレームワーク「EAST」に着目する。EASTは「Easy(より簡単に)」「 Attractive(より魅力的に)「Social(より社会的に)「Timely(よりタイムリーに)」を表す単語の頭文字であり、これらの要素を取り入れることで、人の行動を正しい方向へ導きやすくなる。

ナッジ理論のEASTフレームワーク
・E:Easy(イージー:より簡単に)
・A:Attractive(アトラクティブ:より魅力的に)
・S:Social(ソーシャル:より社会的に)
・T:Timely(タイムリー:よりよいタイミングで)」

 私たちの読書生活においても望ましい行動を増やすにはどうしたらいいのか、この「EAST」のフレームワークに基づいた方法を考えていこう。