ONE PIECEのクロコダイル戦で使われた「ブチ上がるクラシック曲」は?写真はイメージです Photo:PIXTA

日本のアニメ作品と関わりが深い音楽といえば「アニソン」と呼ばれて親しまれている“主題歌”を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、アニメの音楽は主題歌だけではない。劇中曲にクラシックの楽曲を使用したことで、作中屈指の名シーンとなったケースも多数存在する。それらは、物語のテーマやシーンに合致した曲が選ばれているという。※本稿は渋谷ゆう子著『生活はクラシック音楽でできている』(笠間書院)の一部を抜粋・編集したものです。

ルフィの宣言とともに流れる
ドヴォルジャークの「新世界より」

 現在では少年アニメの冒険の中でクラシック音楽を使用していることも多くあります。

 例えば、『ONE PIECE』第126話では、アントニン・ドヴォルジャーク(1841~1904)作曲の「交響曲第9番ホ短調作品95・B.178新世界より」の第4楽章が使われています。

『ONE PIECE』は主人公が海賊になって大秘宝ワンピースを求めて冒険する物語です。「週刊少年ジャンプ」に連載されている大人気漫画が原作で、アニメだけでなく映画も公開されヒットしています。

 ドヴォルジャークは、オーストリア帝国時代のプラハ近郊の町で生まれたチェコ国民楽派を代表する作曲家です。

 父親は音楽家ではなかったのですがツィター(弦楽器の一種)で舞曲を作って弾いており、チェコの民族音楽やダンスの楽曲に囲まれた環境で育ちました。

 ドヴォルジャークの最後の交響曲となった「交響曲第9番・新世界より」は、当時アメリカでの活動を行っていたドヴォルジャークが新世界、つまりアメリカ大陸から故郷チェコへ向けて作った楽曲という意味が込められています。

 海を渡って、新大陸へ進出して活躍した作曲家が、遠く離れたヨーロッパの故郷を思っているのです。つぎつぎと泉から水が湧き出るように溢れ出す、印象的なメロディと壮大なオーケストレーションで、40分はかかる長い交響曲でありながらまったく聴く人を飽きさせません。

 アニメ『ONE PIECE』では主人公のルフィが大海賊クロコダイルと最終決着をつける戦いのシーンで、この「新世界より」第4楽章の冒頭から流れはじめます。

 一度敗れた相手であり強敵のクロコダイルに再度挑む士気を上げていくルフィの気持ちに、「新世界より」の力強く速いテンポの曲調がみごとに合っており、場面の緊張感をより高めています。

 そして目の前の敵を倒して、新しい世界に船出するシーンに、この楽曲の爽快感はまさにこのアニメの目指すイメージにぴったりです。