DX利権 日本カストディ銀行の悪事#番外編Photo by Takeshi Shigeishi

日本カストディ銀行(CBJ)の調査委員会が認定した田中嘉一前社長の「不正行為」に関し、不正に関与したとされるITコンサルティング会社コーラルテックの廣瀬哲也社長が8月、ダイヤモンド編集部の取材に応じた。廣瀬氏は、調査結果について「特定の発言が切り取られて構成されている」と述べ、調査委が指摘した不正を全面的に否定した。田中氏に続き廣瀬氏も、調査の前提を覆す証言を行ったことにより、CBJの説明責任が問われている。特集『DX利権 日本カストディ銀行の悪事』の番外編は、廣瀬氏の一問一答をお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

コーラルテックの廣瀬社長が
調査委指摘に反論「事実と違う」

 日本カストディ銀行(CBJ)の田中嘉一社長(当時)を巡る疑惑に関し、調査委員会が調査対象とした九つの案件のうち、コーラルテック(東京都港区)は6件に関与したとされる。

 2022年4月にコーラルテックを起業した廣瀬哲也社長は、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)や住信SBIネット銀行で田中氏と勤務し、「(田中氏が)同僚・部下として懇意にしていた」人物であると調査報告書は指摘している。

 例えば本特集#2『IBM、野村総研…ITベンダーを利用して業務委託費を還流か、日本カストディ銀行の不正スキーム判明!』で詳報した通り、CBJで22年9月に始まった「NICE基盤」更改プロジェクトで、コーラルテックは日本アイ・ビー・エム(IBM)やデジタル・インフォメーション・テクノロジー(DIT)の業務委託先となり、CBJから間接的に報酬を得ていた。

 報告書はコーラルテックの起用について「田中氏の意向により決められていた」とし、高額な報酬にもかかわらず「実質的な業務成果が見られない」と認定している。さらにIBMや野村総合研究所(NRI)に対し、田中氏がコーラルテックを通じて顧問料報酬を得ようとした疑惑も指摘した。

 また本特集#3『住友組vsみずほ組の抗争勃発!日本カストディ銀行の不正に三井住友FGは「漁夫の利」を虎視眈々』で詳報した外部研修案件では、田中氏のCBJ社長退任後、コーラルテックが主催する研修で田中氏を講師に呼び、CBJから報酬を得ようとしたとされる。

 報告書では、あたかも廣瀬氏が、田中氏との近さを生かして案件に関与し、CBJから報酬を得ようと暗躍する姿が描かれている。だが、インタビューの証言から浮かび上がるのは、それとは全く別のストーリーだ。

 なお廣瀬氏のインタビューは、田中氏のインタビュー(本特集#4『【独占・衝撃告発】疑惑渦中の日本カストディ銀行田中前社長「土屋社長が全て知っている」の真意は?』)をダイヤモンド・オンラインで配信する前に行った。

 従って廣瀬氏はダイヤモンド編集部のインタビューを受けた段階で、田中氏のインタビュー記事を読んでいない。だが、2人の証言は「CBJ側から依頼されて支援スキームを考案した」という点でほぼ一致した。

 その一問一答をお届けする。

――廣瀬さんは田中氏とどういったご関係でしょうか。

 住友信託銀行時代の上司と部下の関係です。最初は証券業務部(現受託資産企画部)で田中さんが副部長、私が担当課長。私が住信SBIネット銀行に出向した際、田中さんは社長でした。難易度の高いシステム案件でご一緒し、ご指導を頂きました。

――コーラルテックの設立経緯は。

 19年7月に三井住友信託銀行を退職し、違うキャリアに挑戦しようと同8月に住宅ローンパッケージベンダーのebsという会社の社長に就きました。そこで約3年の社長経験を経て22年4月に独立し、コーラルテックを起業しました。

 現在コーラルテックに在籍している社員は開業後に転職してきたその当時の仲間です。

――CBJ調査委のヒアリングに応じなかったのはなぜですか。

 応じなかったのではありません。

 今年5月の連休直前だったと思いますが、西村あさひ法律事務所の弁護士から「ヒアリングしたい」とメールがありました。そこに「法令違反の可能性を含め」という記載がありましたので紛争案件と理解し、ヒアリングではなく5月17日付で私の顧問弁護士から質問に対する回答書という形でお返ししています。

 その後、この回答書に対する照会などは特になく、今日に至っています。

――調査報告書によれば、22年9~12月、コーラルテックはIBMからNICE基盤更改業務の再々委託を受けていますね。コーラルテックの起用は「田中氏の意向により決められていた」と報告書で認定されていますが、事実でしょうか。

 CBJ内部の動きは分かりませんが、私の知り得る限り、違うと思います。