ロシア・モスクワ郊外のコンサート会場「クロッカス・シティー・ホール」で3月22日に発生したテロ事件は、144人が亡くなる大惨事となった。このテロ攻撃で、誰が得をするのか?作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が読み解く。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
なぜISがロシア・ウクライナ戦争に関与するのか
ロシア・モスクワ郊外のコンサート会場「クロッカス・シティー・ホール」で3月22日に発生したテロ事件は、144人が亡くなる大惨事となりました。「イスラム国」(IS)が犯行声明を発表し、すでに実行犯として4人が起訴されています。
この4人に関して、3月25日のロシア紙「イズヴェスチヤ」は、モスクワの一般管轄裁判所の公式テレグラムチャンネルを引用して、こう報じました。
4人ともタジキスタンの国籍。ダレルジョン・ミルゾエフ被告は32歳。妻と4人の幼い子どもがいる。サイダクラミ・ムロダリ・ラチャバリゾダ被告は30歳の既婚で子ども1人。シャムシディン・ファリドゥニ被告は25歳で、妻と8カ月の子ども。ムハマドスービル・ファイゾフ被告は19歳で独身の理髪師。医師に付き添われ、車椅子で出廷したということです。
ISから見れば、ロシア・ウクライナ戦争は、キリスト教徒同士の内輪もめです。戦況はロシアに有利ですから、首都モスクワの近くで大規模なテロを起こすことで、ロシア当局のエネルギーを少しでも国内へ向けさせたい。キリスト教徒が殺し合う戦争を、できるだけ長引かせたい。ISはそう考えているのでしょう。