大手新聞が読み違えた岸田政権とロシアの距離感…佐藤優が「意思疎通できている」と語るワケ2024年1月1日、ロシアのモスクワで新年の演説を行うプーチン大統領 Photo:AP/AFLO

日本政府の発表に対するロシアの反応をどう読み解けばいいのか。プーチン大統領が「新年の辞」で初めて言及した「家族の団結」の意味とは?作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が読み解く。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

日本から米国にパトリオット輸出
大手新聞はどう報じたか

 昨年末、日ロ関係に携わる記者の質の低下を感じさせる報道がありました。日本政府が防衛装備の輸出ルールを緩和し、防空用の迎撃ミサイル「パトリオット」を米国に輸出すると決めたことに関して、です。「日本経済新聞」電子版は、以下のように報じました。

 林芳正官房長官は26日の記者会見で政府が決めた米国への地対空誘導弾「パトリオット」の提供について「ウクライナで使用されることは想定されていない」と説明した。

「米軍のみによって使用され、第三者に移転されることがないと確認済みだ」と述べた。
(12月26日)

 日本政府は、供与したパトリオットがウクライナには提供されないという方針を明確にしました。ロシアが誤解しないように、細心の配慮がなされています。しかしそのことは、正しく報じられませんでした。

 ロシア外務省のザハロワ情報局長は27日の会見で、日本政府が地対空誘導弾パトリオットの米国への提供を決めたことについて「日本のミサイルがウクライナに渡る可能性も否定できない。そのような行動はロシアに対する明確な敵対行為とみなされる」と述べた。日本をけん制する狙いとみられる。
(日経新聞・12月27日)
 ザハロワ氏は日本製のパトリオットが「最終的にウクライナに至る可能性が排除できない」と主張。そうなった場合、「ロシアにとって明白な敵意と見なされ、(日ロの)二国間関係において最も深刻な結果を招くだろう」と非難した。
(朝日新聞・12月27日)

 他紙も似たり寄ったりで、外交的センスに欠ける記事が目立ちました。この件で第一に注目すべき点は、ザハロワ報道官の反応が、日本政府の決定から5日も後の27日だったことです。