2023年度(2023年4月~2024年3月)の全国企業倒産は、9053件(前年度比31.5%増)と9年ぶりに9000件台に乗せ、増勢を強めた。コロナ関連支援策で歴史的な低水準をたどった企業倒産は、ここに来てコロナ禍の抑制策のツケが一気に回ってきた格好だ。幅広い業種で倒産が増えているが、なかでも「農業」分野の倒産がジワリと増勢を強めている。2023年度の倒産は82件で、年度ではこれまで最多の前年度(76件)を上回り、2年連続で過去最多を更新した。農業はもともと天候や災害リスクが高く、後継者問題や人手不足、輸入農産物との競合などで、採算低迷の克服が課題になっていた。そこにコロナ禍での需要急減、エネルギーコストの高騰、伝染病の流行などが一挙に押し寄せ、苦境が顕在化した。農業分野の法人化が進み、企業として農業経営に取り組むケースも増えているが、小規模経営や新興企業など経営基盤が脆弱な企業が多く、農業への夢はまだ実現が難しいのが実情だ。(東京商工リサーチ情報部 増田和史)
日本の農業で進む
農業経営の法人化
日本の農業は長らく個人農家が主体だったが、近年は農業経営の法人化が進んでいる。
会社経営のノウハウを取り入れ、収支管理を明確化することで対外信用力を高め、金融機関からの資金調達もしやすくなる。また、社会保険制度の整備で、農業を目指す人材も確保しやすい点がメリットになっている。
農業経営の法人化が広がった背景には、農業の効率化と生産性向上、従事者不足や高齢化への対応などの側面もある。国は担い手育成という面から、積極的に農業経営の法人化を推進してきた。さらに独自の栽培方法や技術などの開発で、事業化に取り組む「農業ベンチャー」も加わり、企業経営としての農業が広がっている。
農業を営む法人は「農業法人」と総称される。組織形態では株式会社が最も多く、約6割を占める。東京商工リサーチの企業データベースを検索すると、農業を主業とする企業は全国で約6万社。このうち、穀物や野菜などの生産をメインとする「耕種農業」(約6割)、酪農や養豚、養鶏などの「畜産農業」(約2割)、造園業などの「園芸サービス業」(約1.2割)の順で多い。