「じゃ、君のところではなんて言うんだい?」

 五木さんが訊ねると、

「僕らは素直ですよ。ただ、『やらせろ!』です」

 まことに比較文化論的シモネタとなりました。他の地方ではどんな言い方をするのでしょうかね。興味深いテーマです。

”早期発見早期治療”がモットー
毅然として指摘するのが阿川流

 もしあなたの目の前に来た人の、ズボンのチャックが開いているのを見つけたら、どうなさいますか?

 人それぞれに判断基準があるでしょうから、決してオススメするつもりはないですが、私はたいてい、指摘します。早期発見早期治療をモットーに。

 一度、総選挙直後の生番組に司会者として出演した折のこと。当選なさった議員の方々が続々とスタジオに到着なさいました。事務所での万歳やスピーチ、メディアの取材、各所へのご挨拶などをひととおり済ませ、ようやくスタジオに駆け込んでいらした男性議員が、

「遅くなりました」

「いえいえ。当選おめでとうございます。では、あちらの席へ」とご案内しようとして、ふと見ると、開いているではありませんか。

 まあ、生放送中はほとんど座っているだけだからカメラに映ることはないと思いつつ、でもそのまま放っておくのも可哀想。そこで、

「あの、チャック!」

 小声ではっきり申し上げました。先方は、あっ、と少し慌てた様子ではありましたが、すぐさま勢いよく閉めて、そのまま席にお着きになりました。その後、「ありがとう」も「失礼な」もありませんでしたが、到着早々のバタバタに紛れて、他の誰にも気づかれずに事なきを得たと思っています。当選直後で興奮気味だったこともあったでしょう。そういうことは誰にでもあると思えば、どうということはない。

 かつて友人の女優Dが、電車のつり革につかまって本を読んでいたときのこと。真ん前の席に座る女性がチラチラとDのことを覗くような仕草をするので、「もしかしてDさん?」とか「ファンです」とか声をかけられるかもしれない。困ったなと思いつつ、なるべく本に没頭する振りをしていたそうです。