「短時間で成果を出す人」がいる一方、「頑張っているのに成果が出ない人」もいる。この違いは何だろう? 経営の最前線で20年以上、成果を上げられる人・上げられない人の差を研究してきた人物がいる。東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」第1位、フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」4度受賞の木下勝寿社長だ。
注目の最新刊『チームX』は「世界的にみても極上レベルのビジネス書」(神田昌典氏)と評され、デビュー作『売上最小化、利益最大化の法則』は「20年に一冊の本」(人気会計士)と絶賛された。そして今、「やる気に頼らず楽しく続けられる」と話題になっているのが、ベストセラー『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。
本稿では、「がっちりマンデー!!」(TBS)公式SNSで「ニトリ」似鳥会長や「食べチョク」秋元代表が「2022年に読んだオススメ本3選」にも選抜した本書を深堀りすべく、働く人のさまざまな「お悩み相談」を木下社長にぶつけてみた。今回は「仕事をさっさとリタイアしたい人」にとっておきの仕事術をご紹介する(構成/藤田悠)。

【FIREでのんびり暮らしたい人】を待ち受ける深刻すぎるリアルPhoto: Adobe Stock

「FIREで幸せになった人」は本当にいるのか…?

【今日のお悩み相談】
忙しい毎日にうんざりしています。どんなに稼いでも、ゆとりがないままでは意味がないと感じるようになりました。必死に働かなくてもいいくらいの経済状態を築き上げれば、たくさんの時間が手に入り、今よりもっと幸せになれるはず。やっぱりFIREを目指すべきでしょうか?

 いわゆるFIRE(Financial Independence, Retire Early)は「経済的自立と早期リタイア」のことですね。

「経済的自立」の状態をつくって、いつでも仕事を辞められる状態を目指すのはいいと思います。
 ただし、「早期リタイア」のほうはまったく別です。よく考えたほうがいい

 私は「FIREで幸せになった」という人を本当に見たことがありません
 もちろん、ネット上では「FIREで幸せ」をアピールしている人がいたりしますが、そういう人はオンラインサロンを運営して、そこから収入を得ていたりする。

 結局、会社を辞めているだけで、別の仕事はちゃっかり続けている状態なわけです。
「…それって、FIREちゃうやん」と言いたくなります。

「過度な自由」は人生をおかしくする

 今はM&Aが活況で、自社を売却して、何億円というお金を手に入れる人がたくさんいます。
 一方、M&A関連の情報サイトやYouTube動画を見ていると、必ず出てくるのが」というテーマです。

 それまで必死で働いてきた人が、M&Aによって大金を手に入れ、一生働かなくていい状態になった途端、いきなり鬱になってしまう ── そういうパターンがすごく多いようです。
 そのため、ネット上には「会社を売る前に、必ず『次の目標』を決めましょう」とアドバイスする情報が多い。

 今すぐFIREできる(けれどしていない)人たちにおいては、もはや「FIRE=鬱」と言ってもいいくらいの認識なのです。

 早期リタイアによって「自由」を手に入れ、そこから毎日を楽しく過ごせる人というのはごくひと握り。
 これは私自身も経験があることなので断言しますが、人間はやるべきことがなくなったら、本当に何もしなくなるし、精神状態も悪くなります。

 やりがい、生きがい、目標を全部失うと、人はおかしくなるのです。
 私の知人にもFIRE状態の人が何人かいますが、あまり楽しそうには見えません。

 正直なところ、私にも今すぐFIREできるくらいの資産はあります。
 人生のステージや年齢によって、考え方は変わってくると思いますが、今のところリタイアをしたいとは1ミリたりとも思いません

感情で「忙しさ」をコントロールする2つの方法

 相談者の方も「FIREを目指すべきかどうか」ではなく、どうすればゆとりが手に入るかという軸で物事を考えてみるといいでしょう。

 特に「忙しさ」というのは、あくまでも主観にすぎません。
 感情のマネジメントができるようになれば、実はいくらでも「忙しさ」はコントロールできます

『時間最短化、成果最大化の法則』でも、「ゆとり」のつくり方にはさまざま言及しておきましたが、ここでは感情による「忙しさ」コントロール法の2つをご紹介しておきましょう。

(1)「忙しい」と感じたら、逆にやるべき仕事量や作業量を「3倍」に増やす。その後、元に戻すと暇に感じる
(2)もっと忙しい人を見る。すると「忙しいと思っていたけれど、所詮あの人の3分の1だ」と思うと、忙しさのイライラがなくなる

 繰り返しになりますが、「早期リタイア」を考えるときはくれぐれも慎重に。
一方で、「経済的自立」の追求を目指すのは、決して悪いことではないと思います。

(本記事は『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』著者による特別寄稿です)