「短時間で成果を出す人」がいる一方、「頑張っているのに成果が出ない人」もいる。この違いは何だろう? 経営の最前線で20年以上、成果を上げられる人・上げられない人の差を研究してきた人物がいる。東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」第1位、フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」4度受賞の木下勝寿社長だ。
注目の最新刊『チームX』は「世界的にみても極上レベルのビジネス書」(神田昌典氏)と評され、デビュー作『売上最小化、利益最大化の法則』は「20年に一冊の本」(人気会計士)と絶賛された。そして今、「やる気に頼らず楽しく続けられる」と話題になっているのが、ベストセラー『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。
本稿では、「がっちりマンデー!!」(TBS)公式SNSで「ニトリ」似鳥会長や「食べチョク」秋元代表が「2022年に読んだオススメ本3選」にも選抜した本書を深堀りすべく、働く人のさまざまな「お悩み相談」を木下社長にぶつけてみた。今回は「口頭でのやりとりに苦手意識がある人」にとっておきの仕事術をご紹介する(構成/藤田悠)。

【その場でパッと考えがまとまらない!】アドリブ恐怖症を克服するたった1つの習慣Photo: Adobe Stock

「アドリブが下手」を克服する方法

【今日のお悩み相談】
口頭でのコミュニケーションに苦手意識があります。相手からバーっと話されると、うまく考えがまとまりません。その場で「はい、わかりました」と言ってしまったあと、少し時間が経ってからいろいろと気になることが浮かんできて、モヤモヤするというのがお決まりのパターン…。アドリブで的確なこと、気の利いたことが言えるようになるには、どんなトレーニングをすればいいでしょう?

 これはみんなそうだと思います。
 私自身もアドリブが得意だとは思っていませんし、訓練してどうにかなるものなのかも知りません。

 ただ、確実に言えるのは、こういうときには問いを変えたほうが早いということです。

「アドリブが苦手! アドリブができるようになるには、どうすればいいですか?」
 ではなく、
「アドリブが苦手! アドリブが苦手でもうまくいくには、どうすればいいですか?」
 というふうに問題を変換してみる。

 これなら私なりの工夫をお伝えできます。
 端的に答えるなら、「文章に頼りましょう」ということになります。

 大切なことは「口頭レベル」で決めない。
 必ず「文章ベース」で吟味する習慣をつけるのです。

「“口頭”が得意な人」になろうとしなくていい

 物事を体系的に整理し、ベストな答えを探っていくなら、やっぱり文章です。
 テキストベースで書き出し、順序を入れ替えたりグルーピングしたりしたほうが、大切なことが見えてくる可能性は圧倒的に高くなります。

「口頭」のコミュニケーションは、そういう体系立った思考には向きません

「なんとなくこれがよさそうかな」という直感頼みになりがちです。
 よっぽど頭の回転が速い人か、直感が優れた人でもないかぎり、アウトプットの質は低くなるでしょう。

 ですから、仕事のコミュニケーションは、必ず「文章」に頼るべきです。

 逆に言えば、物事を文章にしてじっくり考える能力を徹底的に磨いていけば、たとえアドリブ・口頭でのコミュニケーションが苦手であっても、たいていの知識労働では成果は出せます

「アドリブ前後」には必ずテキストコミュニケーション

 もちろん、現実の多くのタスクでは、口頭でのコミュニケーションが避けられません。
 それでもやりようはいくらでもあります。

「口頭でのやり取り」の“前”か“後”に、「文章でのやり取り」を入れるようにするのです。

「口頭よりも“前”に文章」のほうはシンプルで、要するに「テキストで準備する」ということ。

 プレゼンするなら、話そうと思っていることの「原稿」を書いてみる。
 打ち合わせがあるのなら、「議題のリスト」をつくって持参する。
 相談ごとをするときには、その内容を事前に「メール」で送っておく。

 私自身、たとえばメディアから取材を受けることになったら、必ず事前に質問事項をもらうようにしています。

 それにあらかじめ目を通しておくのはもちろんですが、そのままアドリブで取材に臨むようなことはしません。
 それぞれの質問にどう答えるかを、必ず文章で書き出しているのです。

 こうすれば当然ながら、ぶっつけ本番より受け答えの質が断然上がります。
 また、余裕をもって話せるので、事前には思いつかなかった発想が、取材の中でポロッと出てきやすくなります

「議事録」こそ最強のビジネス会話術である

 一方、仕事ではスピードが重視される局面もあります。

 しかしそういうときでも、口頭でのやり取りだけに頼るのは危険です。
 会話が終わった「」に、必ず文章でのやり取りを入れるようにします

 たとえば、取引先で打ち合わせをして、口頭ベースで「いつまでにこれをしましょう」という合意が取れたとします。ここで、やり取りをそのまま放置してしまう人が多いのではないでしょうか。

 こういうときも、必ず話した内容を文章で整理し、相手先と共有しましょう
 その過程で、新たに気づいたこと・確認したいことが出てくるかもしれません。

 しかも、相手に文章を送るのは、早ければ早いほどいい
 当日中、あるいは、遅くとも翌日にはメールを送るべきです。

 アドリブが苦手な人は、「アドリブって苦手なんだよなー」とぼやいていても始まりません。
 「いかに“アドリブでない領域”で勝負するか」に知恵を絞りましょう

(本記事は『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』著者による特別寄稿です)