サウスチャイナ・モーニングポストのスクープ
“ドバイ王子”はいったい何者なのか?
そのファミリーオフィス開幕の前日、英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」(以下、SCMP)が、ドバイ王子の身元に不明な点があるとする記事を掲載したのだ。記事のタイトルは「身元不明のドバイ王子:行政長官との面談前に、政府はデューデリジェンスを行わず」と、投資業界用語である「デューデリジェンス」(投資対象への調査)という言葉を使ったかなり刺激的なものだった。
ドバイ王子は「Sheikh Ali Bin Rashed Al Maktoum」と名乗っており、うち「Bin Rashed」は「Rashedの息子」という意味を表す。だが記事によると、ドバイ首相には「Rashed」という名の兄弟はおらず、王子が「ドバイ首相の甥」だという確認が取れないというのだ。また、アール・マクトゥー厶家の族譜を見ても、同王子の名前が見当たらないという。
さらに、王子のUAEの本拠地住所を調べてみると、ドバイから約29kmも離れた中産階級住宅地に位置していた。また、王子がこれまでどのような投資や経済活動を行ってきたのかの具体的な動向が一切つかめないと伝えていた。
ただ、記者がUAE駐香港領事館に確認したところ、「Sheikh」は首長(王族)につけられる言葉で、「アリ・アール・マクトゥーム」は間違いなく王族出身者であることを示しているという回答だった。また、王族に詳しい消息筋は、同王子が王族の「遠い支族」の出身だと証言したとされる。
この記事から、ドバイ王子は人々が当初(ぼんやりと)描いていたイメージとはかなりかけ離れた存在らしいことが明らかになり、このドバイ王子と呼ばれる人物はいったい何者なのか?という疑問の声があっという間に広がった。
記事ではまた、行政長官の事務所から疑問が呈されない限り、日常的な表敬訪問に対して相手の身分チェックをするような習慣はないとする政府高官の声も伝えている。
その結果、「5億米ドルを投じて香港にファミリーオフィスを開設するとしているドバイ王子の身元や財政的背景の調査がされないまま、香港政府のトップとの面会が許可されていた」と記事は伝えていた。