王子だけでなく周りのスタッフも怪しい人物だらけ
もしかして香港政府はだまされている?

 もちろん、王族が歌手であってもなんの不思議でもない。しかし、その経歴はそれまでファミリーオフィスの王子のバックグラウンドには書かれていなかったのである。

 メディアは次に、王子の代わりにオフィスで広報活動を行ってきた人たちに注目し始めた。

 オフィスのCEOとしてさまざまなメディアに王子と共に姿を見せていたイレノア・マック氏は、四川省のモノレール企業の香港代表を務めていたことが分かった。しかし、当該モノレール企業は中国国内での契約工期内に建設を間に合わせることができず、すでに不渡りを出して経営者は資産差し押さえに遭っていることが明らかになる。それなのに、彼女は昨年、親中派議員の後押しで香港市街地に同社モノレールを敷設するプランを政府に提案したという。

 また、オフィスの国際戦略トップとして名前を連ねるシンガポール人男性も、かつて暗号資産関連の事業を大きく展開した人物だった。しかし、その後米国の証券取引委員会の警告を受けて取引を中止させられていることも暴露された。

 公式ウェブサイト上に名前を連ねる、オフィスの主要メンバー3人はフィリピン国籍で、さらにそのうちの一人は元ミス・ユニバース・フィリピン代表だったという。だが、彼女はかつて詐欺事件に連座して逮捕されていることも分かった。

 ……こうなってくると、ますます疑惑が深まってくる。香港政府は、身元調査もしないまま、「5億米ドル」「ファミリーオフィス」「中東の王族」という宣伝文句に踊らされているのではないか?