中国発のSF『三体』中国発のSF『三体』は、アジア圏作品として初めてヒューゴー賞の長編部門を受賞。全30話でテレビドラマ化された。日本でもWOWOWなどで視聴できる。(C)TENCENT TECHNOLOGY BEIJING CO.,LTD

大ヒットした『三体』をきっかけに、この10年で急激に世界的に存在感を増した中国SF。2023年10月には、「SF界のノーベル賞」と言われるヒューゴー賞の授章式を含む世界SF大会が四川省で開かれた。しかしそこで同賞史上最悪なスキャンダルが起きたのだ。SFファンたちが「中国政府の介入だ」と激怒した事態とは?(フリーランスライター ふるまいよしこ)

「SF界のノーベル賞」ヒューゴー賞の
最優秀長編小説賞をアジアで初めて獲得した『三体』

中国語版『三体』(全3巻)中国語版『三体』(全3巻) 拡大画像表示

 あなたはもう『三体』を読んだだろうか? 中国のSF作家、劉慈欣(りゅう・じきん)による作品で、2015年に「SF界のノーベル賞」とも形容されるヒューゴー賞の最優秀長編小説賞を受賞した。アジア人初の快挙である。

 日本でも2019年に邦訳版が刊行され、中国小説のファンのみならずSFファン、さらにはSFファンですらない人たちにまで絶賛され、シリーズ売り上げ90万部を超えるベストセラーとなっている。そのヒットは日本における中国作家に対するイメージを完全に塗り替えたといえるだろう。中国では昨年、アニメとテレビドラマがそれぞれ制作されて話題を呼び、さらに米Netflixも数年かけて制作したドラマを配信した(日本では3月配信予定)。間違いなく、中国の現代小説として世界的な影響力を持つ作品である。

『三体』が受賞した翌年の2016年には、中国人作家、郝景芳(ハオ・ジンファン)の『折りたたみ北京』がヒューゴー賞の最優秀中編小説作品賞に輝いている。

 中国人作家から次々と素晴らしいSF作品が生まれ、それが世界的に読まれ始めたことが、中国の文学界にも自信をもたらしており、次なる劉慈欣や郝景芳を目指して、多くの若手作家が育ちつつある。

 もちろん、そこで自信をつけたのは文学界や作家だけではなかった。中国政府も、である。