来るぞ370兆円市場 ビッグバン!宇宙ビジネス#2写真提供:アクセルスペース(写真は合成です)

370兆円にも膨らむ可能性がある宇宙ビジネス。実は、「宇宙版GAFA」になる可能性を秘めた日本企業が複数存在する。世界トップクラスの技術と実績があり、すでに数百億円の資金を集めているのだ。特集『来るぞ370兆円市場 ビッグバン!宇宙ビジネス』(全13回)の#2では、宇宙市場の本丸ともいえる「衛星ビジネス」を追う。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

370兆円の宇宙ビジネスの本丸「衛星」で
世界トップクラスの日本企業が複数

 窮地に陥っていた愛知県豊田市の水道局を救ったのは「宇宙」だった――。

 今、全国の水道局を悩ませているのが、埋設された水道管の破損による漏水だ。具体的な破裂箇所は作業員が漏水音を頼りにしらみつぶしに調査するしかない。豊田市でも緊急漏水の箇所を夜を徹して三日三晩探し続けたものの、近隣の工場音が邪魔をして、見つけることができなかった。

 それを解決したのが、衛星データスタートアップ企業の天地人のサービスだ。

 まず同社が契約する500基を超える衛星のデータから、調査エリアの日中と夜間の地表温度をピンポイントのメッシュで取得する。日中と夜間で地表温度の差が大きい地域では、埋設水道管に負荷がかかり、破損リスクが高くなるからだ。これらのデータを地盤の情報や、水道管の埋設・改修時期、管の素材など各種データと掛け合わせて、リスクが大きい水道管部位を判定する。結果、どうしてもわからなかった破裂部位を見事的中させた。

 評判が自治体関係者の中で広がり、4月に同社が開催したセミナーには100人以上の担当者が押し寄せた。豊田市に続き福島市など複数の自治体がこの「宇宙水道局」のサービスを契約し、その後も引き合いが200件以上殺到しているという。

 370兆円にも膨れ上がる可能性を持つ宇宙市場。中でも、天地人が提供するような人工衛星からのデータを使ったサービスと、そのための衛星打ち上げは、宇宙市場の本丸ともいえる。

 実は、その「衛星」分野で、世界唯一の技術を持つ日本企業が続々登場している。しかも、ビジネスはすでに軌道に乗り、各社は数百億円を集め数年以内の株式上場も明言。さらには、大手企業の熱視線も集めている。

 例えば、トヨタ自動車や電通グループなどは衛星データスタートアップと協業している。さらに小型人工衛星スタートアップには東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険子会社の三井住友海上キャピタルが出資。不動産会社も三井不動産と森トラストが出資を行っている。

 新たな巨大産業で存在感を発揮するような日本企業は久しく登場していない。いよいよ、「宇宙版GAFA」は日本から登場するのだろうか。

 370兆円の宇宙ビジネスビッグバンをけん引する知られざる日本企業。何が強みで、どの大手企業と協業し、どのように資金を集めているのか。具体名と共に、その実力を見ていこう。