ラグビーワールドカップ(W杯)で、初のベスト8進出を果たした日本代表。その裏では、ラグビーのプロ化に向けた大改革も動き出している。特集「熱狂!ラグビー ビジネス・人脈・W杯」(全10回)の第3回では、日本ラグビーの未来図と、ホームスタジアムの確保などプロ化の条件、トップリーグ各チームや選手の反応を紹介する。(「週刊ダイヤモンド」2019年8月31日号を基に再編集。肩書や数字などは当時のもの)
W杯は成功したが
トップリーグは集客に苦戦
「後のことは、森重隆(会長)と清宮(克幸副会長)に託したから」――。
ラグビー界の重鎮、森喜朗氏は本誌にそう伝えた。同氏は今年の4月、突然、日本ラグビー協会名誉会長の辞任を表明して、同時に執行部の大胆な若返りを求めた。政治家としては毀誉褒貶相半ばする森喜朗氏だが、アジア初のワールドカップ(W杯)を実現させた中心人物であり、ラグビーに対しては真摯だ。
だが、功労者の森喜朗氏が自国でのW杯開催を前に表舞台から去るほど、ラグビー界は危機に直面している。例えば、社会人による日本ラグビーの最高峰リーグであるトップリーグの昨年の入場者数は、1試合当たり5153人まで減少。深刻なのは、そのうちトップリーグに加盟している各企業によるチケットの買い上げが6割程度含まれていること。実質2000枚程度しかチケットが売れていないのだ。
チケットが売れないということは、スポンサーの獲得や放映権の交渉にもマイナスとなる。財政基盤が不安定では、日本代表の強化費のほか、選手の育成や競技の普及のための予算も削るしかない。実際、前回のリオデジャネイロ五輪から採用された7人制ラグビーは、男子の場合、トップレベルの大会が国内で開催されていない。