「寿命を縮める家」に住んでいる人が気づかない“断熱性”の驚くべき格差戸建住まいの人がマンション住まいの人より寿命が短い理由は、その構造にあるようだ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

戸建よりマンション住まいのほうが
寿命が長くなるのはなぜか

 前回の記事「『寿命を縮める家』と『寿命を延ばす家』の決定的な違い」で、持家と賃貸に住む人の寿命が3.3年も違うことを、国勢調査を基に立証した。自分の健康と寿命は自分で勝ち取る必要があり、持家を取得することはその手段でもある。今回は、同じ持家の中でも戸建とマンションを比較してみよう。

 寿命の計算方法はこうだ。国勢調査では5歳おきに調査対象者が住んでいる家を特定している。戸建かマンションかの区分である。高齢者は引っ越しをほとんどしないのと、70歳の人は5年後75歳になっているので、この間で生きていた人の割合を生残率とし、余命を計算する。全体の平均余命は24.6年で、賃貸は21.8年、持家は25.1年と3.3年の差が生じた。

 次に、持家の中でも戸建とマンションを比較しよう。戸建ての平均余命は25.0年で平均寿命は87.0歳、分譲マンションは同27.3年で同89.3歳となり、マンション住まいのほうが2.3年長生きしている。

 この寿命に影響している一因は家の寒さである。人間は寒さに弱い。冬場(12月~2月)に亡くなる確率は、それ以外の季節の118%にもなる。冬の死亡率を他の季節並みにすれば、84歳の寿命が6年延びる計算になる。

 また、ヒートショックによる死亡者数は約1.5%を占め、冬場の風呂場における高齢者が対象となる。このヒートショックをなくすだけでも、高齢者は寿命を3年ほど延ばせる計算になる。鎌倉時代に吉田兼好が『徒然草』で「家の作りようは夏を旨とすべし」と書いているが、それは昔の話。今は冬を快適に過ごすことを重視して家を建てなければ、死亡する確率が上がってしまう。

 ヒートショックの原因となる室温差が大きい状態は、戸建てに見られる。戸建は換気のために風呂場が外壁に面した場所にあるケースが多い。これに対して、分譲マンションは外壁に接したところに風呂場はほぼない。