君が部下に命令すると、早出による残業代が発生する

 翌日、D専務はB課長を呼んだ。

「昨日、A君から事情を聞きました。早出出勤を指示したそうだけど、仕事、そんなに忙しいの?」

「忙しいとかそんな問題ではありません。仕事をする人間の心構えとして早く出勤し、始業時間になったらすぐに仕事ができるような状態にしておくのが当然でしょう。他の部下にも同様に話しています」

「君がそうやって部下に命令すると、早出による残業代が発生するって顧問社労士に指摘されたよ」

「えっ、そうなんですか?」

 D専務はE社労士から受けたアドバイスの内容を説明した。

「専務のおっしゃることはよくわかりました。しかし、会社の営業時間は9時からです。9時に出勤されたのでは、顧客への対応ができません」

「じゃあ、例えば管理課の勤務時間を8時30分~17時30分と9時から18時までのシフト制にして、9時から9時30分までの電話は早番の社員が応対するようにしたらどうだろう。いくら何でも営業開始時間から一斉に申し込みや問い合わせが来ることはないだろうし、メールだってすぐ返信が必要ないものも多いはずだ。」

「……そうですね。考えてみます」

 B課長は憮然とした表情で言った。