待ちに待った冬のボーナス。しかし基本給2カ月分もらえるはずが、予想していたより15万円も少なかった!総務部長に確認したが、説明に納得がいかない。「そもそもボーナスの査定基準を社員に教える必要はない」と総務部長は言うのだが……。(社会保険労務士 木村政美)
従業員数150人の物流会社。
<登場人物>
A:30歳。大学卒業後、甲社の管理課に勤務している
B:Aの同僚で管理課勤務。Aとは仲が良い
C:甲社の総務部長。社員の労務管理および給与決定の責任者
D:甲社の顧問社労士
冬のボーナス、基本給2カ月分のはずが少なすぎない?
甲社では、毎年全社員に夏と冬のボーナスを支給している。Aのボーナス額は、新入社員のときは寸志程度だったが、入社2年目からは夏のボーナスがおよそ基本給の1.5カ月、冬のボーナスは基本給の2カ月分である。
12月1日、待ちに待った冬のボーナス支給日。Aは出勤後、上司である管理課長から「冬季賞与明細書」と書かれた1通の封筒を渡された。
「自分の基本給は25万円だから総支給額は50万円。ここから税金とか引かれても、手取り40万円は固いな。ヨッシャ!」
自席についたAは、早速封筒の口を切り、明細書の内容を確認すると、大声で叫んだ。「エーッ、総支給額35万円だって? 自分が考えていた額より15万円も少ないじゃないか!」周りの痛い視線に気付いたAはその場で謝ったが、頭の中はちょっとしたパニック状態だった。
昼休み。休憩室で1人ふてくされながらコンビニ弁当を食べていたAを見たBは、
「どうしたの? 今日、機嫌悪そうじゃん」
と言いながらAの隣に座り、弁当を食べ始めた。AはBに尋ねた。
「今年の冬のボーナス、いつもの年より低くない? 会社、もうかってないのかなあ……」
「えっ? そんなことないでしょ。俺は去年と同じで50万円もらったよ」
AとBは同じ年齢で、ともに大学を出て新卒で入社。担当部署も一緒なので基本給は同じである。AはBに食ってかかった。
「じゃあ、どうして俺はB君よりボーナスが15万円も低いんだ! 理由を教えてくれよ」
「そんなの知らないよ。最終的にボーナス額を決めているのはC総務部長だから、直接聞いてみたら?」