黒田日銀が初回の金融政策決定会合で「異次元金融緩和」を決めたことで、市場は激しく反応した。急激な株高、円安、さらには長期国債の先物相場が乱高下し取引停止に陥る事態まで発生。世界の注目を集めるインフレ目標政策は、はたして2年で2%の物価上昇率を実現できるのか? そのために必要な戦略とは何か? 政権ブレーン・伊藤教授が、金融緩和政策の意義と成功の鍵を明示する!

2年間で2%の物価上昇率の
達成は可能なのか

 黒田東彦日銀新総裁は就任以来、2年程度で物価上昇率を2%にまでもっていきたいという意欲を示してきた。だが、国会における黒田総裁への質問や、市場関係者の議論を聞いていると、本当に2年という短い期間で2%の物価目標を達成できるのかと疑う声が強い。

 市場の動きを見ても、物価上昇がどの程度早期に実現できるのか、疑っているようでもある。長期金利が低下の傾向を示しているが、これは市場が物価はすぐには上昇しないだろうと予想していることを示唆する。

 もし2年程度で物価上昇率が2%にまで上がることが確実なら、長期金利もそれを反映して上昇するはずである。物価上昇が予想されることに伴って実質金利は低下していくと思われるので、金利の上昇幅は2%よりははるかに低いだろうが、それにしても長期金利が下がることにはならないはずだ。これは市場がまだ金利に物価上昇を織り込んでいないことを意味する。

 市場は黒田新体制がどのような動きをするのか、じっと観察していたのだ。その市場を大きく驚かすような大胆な金融緩和策を黒田日銀は打ってきた。4月4日に行われた新体制最初の金融政策決定会合の結果を受け、市場は予想外の大胆な動きにすぐ対応できず大きく揺れた(緩和策発表の翌4月5日には、長期金利の指標である新発10年債利回りが史上最低水準の0.315%に下落した後、一転して0.620%に急上昇するなど乱高下した)。10年物国債の金利がこれだけ1日の間に乱高下したことに市場の混乱ぶりが見て取れる。