19世紀の英国首相パーマーストン卿は、当時のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン地方の(デンマーク、プロイセンなどへの)帰属を巡る国際的な論争があまりに複雑だったため、それを理解していた人は3人だけだと語ったといわれている。その3人とは、亡くなったアルバート王子、知性に難のある大学教授、そしてその問題をすっかり忘れてしまったパーマーストン卿自身だ。現代の中東問題は、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン論争よりもさらに複雑だ。そして米国では知性に難のある大学教授が少なくないが、イスラエル・パレスチナ紛争の背景や米国大統領が現実的に採ることのできる限られた選択肢について理解している米国民の数は皆無に近いと言えるほど少ない。その結果、米国の中東政策を巡る議論はほぼ必ず激しいものであり、賢明なものであることはめったにない。