坂之上 山口さんが、最後に求めているのは非貨幣経済ですよね。そこに全力を投じたらいいのではないでしょうか?
山口 おっしゃる通りです。ただ、今はとにかく何でもやろうと。ただ、ひとつひとつのプロジェクトでは、非貨幣経済のエッセンスを意識して取り組んでいるつもりです。そう考えるのが、強引かもしれないですけどね。
坂之上 たしかに、エッセンスは貫かれているのかもしれません。でも、理念はわかるけれども、まわりの人が理解するのはちょっと難しいかもしれませんね。逆に考えれば、それだけ多くのことを実践されていて立派だなとも思いますけど。
お金は大事。でも、愛がある仕事しか引き受けたくない
坂之上 私の場合はすごく単純なんですね。フリーランスという立場で仕事をしているので、お金がすごく大事だと思っています。ただし、闇雲にお金が欲しいわけではなく、月にどれくらいのお金があればハッピーかという基準を自分で決めているんです。
たとえば、基本的な生活費プラス1週間に1回家族と外食ができて、誰かから何かを手伝ってと言われたときに、その場所を往復する交通費と宿泊費があり、そんな生活を送るのに十分な金額さえ稼げればいい、という風に決めてるの。
山口 そう決めないと、必要以上に稼いでしまうんですか。
坂之上 そうなんですよ。頼まれるし、頼まれればやってしまいがちなんです。でも、仕事を引き受けた分だけ時間に追われ、ひとりで考えごとをする時間や友人と過ごす時間がなくなり、「忙しい、忙しい」って状態になっちゃうでしょう?
そのあたりをコントロールできるようになりたいと思いながらも、現実にはあまりできていないんです。頼まれると断れなくて、ついやり過ぎてしまう。ですから最近は、依頼されたプロジェクトに「私自身がこのプロジェクトに愛がもてる」と感じられたものしか引き受けないようにしています。実は、私は今回のような対談も、お受けするかどうか慎重に選んでいて、今日は山口さんだからここに来ました(笑)。
山口 ありがとうございます。