坂之上 対談は、その相手とお目にかかった帰りに災害や事故に遭って命を落とすことがあっても、最後に会ったのがあの人でよかった、と覚悟できる方だけ引き受けています(笑)。同じように、プロジェクトでも愛がもてるのか、もてないのか、引き受ける前にものすごく考えますね。
もちろん、愛がもてそうで、素敵なオファーでも、休日の家族の時間を遮るようだと思えば、やめる、とか……お金って、あるにこしたことないけど、終わりがないんですよ。どうバランスとるか、とっても大事。
お金に見合う愛の深さを得るには、尋常ならざる努力が必要
山口 その点では、僕も洋子さんと似ていますね。お金に関して言うと、翌年必要な分は少なくとも貯めるようにしています。その年に稼がずにいると、次の年は1銭もない状態になってしまいますが、理論上、1年間は何も稼がなくて大丈夫な状態にするんです。
坂之上 へえ。
山口 僕は考えごとをする時間が非常に重要なので、その時間をつくるためにも「プロジェクトの質」と「一緒に組む人の格」でやるかやらないかを決めています。取り組んだプロジェクトがM&Aやコンサルティングであればお金が入ってきますし、反面お金が出ていくだけのプロジェクトもあります。それを人は投資と呼びますが、お金が戻っているとは思っていません。実際に返してくれない人もいますしね。
つまり、お金のプラスマイナスは関係なく、直感的にいいなと思ったプロジェクトだけをやるように整理しています。お金に対する欲望はキリがないので、そこは考えたくないんですよ。むしろ重要なのは、先ほどの「余裕率」なんですね。
坂之上 わかります。
山口 余裕率は5段階と言いましたが、3は「冷静に損得を考えている状態」です。1と2は「自分が何とか得をしようと考えている状態」で、4と5は「お金が入ろうが入るまいが気にしない求めていない状態」です。
どんなコミュニケーションでも、余裕率が1や2のとき発する言葉と、4や5で発する言葉は違うはずなんです。出てくる思考も違っていて、5のときの思考は、ピュアで真実に近く、応用性も普遍性もある。同じ角度から物事を見ても1の状態で出てくる思考は、陳腐で相手に響かないということが分かってきたんですね。だから、なおさら余裕率をコントロールすることを意識していて「心のなかをどう整えるか」ということを重要な行動指標にしているんです。大事なのはお金の量じゃない。
坂之上 なるほど。