山口 どうですかね(笑)。その点で、『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』がどのような反響を呼ぶかが、ひとつの指標になります。現在の社会を形成している「貨幣経済」は否定すべきものではないとしても、一方に信頼関係に基づく「非貨幣経済」があって、それを多くの人が生活の一部に取り入れてくれればいいと思っているんですけどね。
頭だけでビジネスをやって、楽しいですか
山口 僕がいま最も気をつけているのは「欲の規制」です。これは男性的な考えかもしれませんが、いろいろなものを持たないようにしているんです。欲望を肯定も否定もしませんが、自分のキャパシティ以上にはしないと心がけて行動しています。キャパシティ、つまり自分の持っているお金や能力や愛の範囲内で、「何かを求める心」を削ぎ落とすほど、自分の「余裕率」が高まるのではないかと考えるからです。常に、自分で自分の余裕率を5段階で評価付けしていて、いまは3だな、2だなと……。
坂之上 そういう風に自分で自分を評価せずに放っておくと、キャパ(シティ)以上にお金に対して欲が出てしまうってことですか?
山口 そうなんです。しかも、偏ってしまうんですね。「頭」と「感受性」というふたつの座標軸で考えると、僕は頭を使うほうが得意です。だから放っておくと「頭」を使う座標軸が高くなり、「感受性」の座標軸が低いところで行動してしまうんです。理想は、どちらの軸も高い位置で行動することなんですけどね。
坂之上 どうして感受性の軸がうまく育たなかったのでしょう(笑)。
山口 育ってないですかね(笑)。ただ、僕の兄は、すごく人の気持ちを感じるのがうまい気がします。でも僕は、考えて納得したいタイプなんです。
坂之上 お兄さまに徳があるなら、家庭環境のせいではないですよね〜。賢すぎるのかしら。
山口 「頭」でビジネスをやってしまうのは問題だと思っています。
坂之上 頭だけでビジネスをやって、気持ちがいいんですか。自分が考えたシステムでビジネスをやって成功すれば、納得感があるということですか。
山口 頭は歓びますよね(笑)。でも、「へそ」から出たアイデアで事業をやらないと結局は回らない。