ソーシャルメディア全盛の今、人生を自分の手で切り開き、好きなように生きるチャンスは誰にでもある。『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』の著者・山口揚平さんと、『僕らの時代のライフデザイン』の著者・米田智彦さんが語り合う、もっと自由に、もっと豊かに生きるために知っておくべき「お金の正体」。
何より「好き」を優先し、
次に「食う」方法を考える
米田:僕たち2人、これまで辿った経歴はまったく違いますが、実はいろいろと共通項がありますよね。僕は1973年生まれで、山口さんは75年生まれとほぼ同世代。そのうえ職場も一緒だった。といっても、実は、新宿にあるシェアオフィス「HAPON」に入居している同士なんですけれど。今でもHAPONにはよくいらっしゃるんですか?
山口:たまに行っていますよ、月1くらいで。
米田:僕も立ち寄るのは月に2回くらいかな。そこで何度かすれ違って、ご挨拶はしていたんですけど、「いつか飯を食いましょう」とか「今度ゆっくりお話しましょう」と言ったまま、気がついたら1年が過ぎていました(笑)。
山口:なかなかお目にかかれなくて本当に失礼しました。でも、フェイスブックではずっとつながっていましたよね。この対談を前に米田さんとのやりとりを見直して、しみじみ振り返りました。いやあ、ここまでくるのは長かったなあ、と(笑)。
米田:まあとにかく、この機会にお会いできて本当によかったです。山口さんのお書きになった新刊『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか』読ませていただきましたよ。
山口:ありがとうございます。
米田:タイトルからして、面白いですよね。ピカソとゴッホって、比較対象としてもすごくいい。どっちも超有名で世界屈指の画家だけれど、ゴッホはずっと貧乏で悲惨で、一方のピカソは幸せな大金持ちだったという。ただこのタイトルから山口さんのご専門である貨幣論とか資本論というテーマには、すぐに結びつかないですよね。なぜこれに決めたんですか?
山口:本文中で触れる、「ピカソはなぜ現金ではなく小切手を使ったのか」とか「ピカソはなぜワインのラベルをタダで書いたのか」とか「ピカソはなぜ名前が長いのか」というエピソードをタイトルに引っ掛けることで、「お金の正体を知れば、僕たちはもっと自由になれる」という本のテーマを、より身近に感じてもらいたかったんです。
米田:そう、その「僕たちはもっと自由になれる」というテーマ、そこはまさに僕の新刊『僕らの時代のライフデザイン』とも関連があって。山口さんの本を実際に読ませていただいて驚いたんですが、僕の本のサブタイトル「自分でつくる自由でしなやかな働き方・暮らし方」と似てますよね。文中にも似た表現がよく出てくるなぁって。
山口:僕もそう思いました。米田さんがこの本を書いたきっかけは何だったんですか?
米田:このソーシャルメディアの時代をどう乗り越えていくべきかと考えたとき、実は働き方も生き方も選択肢はたくさんあって自由でいいんだと気づいたのが始まりでしたね。「こうふうにやれば成功できる」と押し付けるんじゃなくて……僕は本の中では「設定条件」という言葉を使っているんですが、読者一人一人の状況って違うわけで、僕のやり方を押し付けるものではないと思ったんですね。
だから、読者のみなさんにとって何かのヒントになれば、その選択肢を増やしたいと思って、1年間の「ノマド・トーキョー」という、いわばフィールドワークの中で出会った、人生を自由にデザインしている28人の事例とコメントを並べて紹介しています。そこから自分に合うものを取捨選択してもらえればいいな、と思って。
山口さんの場合は、ご自身の経験を元に組み立てた貨幣論、つまりフレームワークを論じるという方法を採っていますけど、基本的には「自由に生きるためにはどうすればいいか」を考えている点で僕らは共通していますよね。
山口:そうですね、共通の面白い友人たちも何人か出てきますし。米田さんは「フィールドワーク」、僕は「フレームワーク」について同時期に出る本で書いているんですね(笑)。彼らってみんな、まず楽しいことありきで、次にそれでなんとか食っていこうと思っているじゃないですか。僕は彼らのことを応援したいと思っているんです。僕自身も、「好き」か「食える」のどちらかといえば、間違いなくまず好きなことを優先しちゃうタイプですから。
米田:山口さんって元々コンサルティングの世界の人なのに、儲かることが最初にこないところが珍しいですよね(笑)。