親子関係の問題は、家庭という閉鎖的な空間で生じるものだからこそ、解決が難しいといえます。
外部の目には一見、理想的な家族に見えていても、実はその中にいる当事者にとっては地獄に等しい親子関係であるケースも多々あります。そして自身の異常な親子関係の体験を訴える当事者に、外部の人は信じてくれないどころか「そんなことを言う、あなたのほうがおかしい」と、さらに傷を深くえぐるような言葉を投げかけてくることさえあり、当事者は自分の苦しみが理解されることはない、とあきらめ、口を閉ざすしかないという現状があります。
自分にとって「害になる親」、つまり毒親からは逃げるしかない、とは言われますが、実際に毒親との絶縁は簡単なことではありません。絶縁してもなお追いかけてくる毒親、周囲からの残酷な言葉……ここでは実際に毒親と絶縁した経験を持つ著者が自身の体験を綴った『幸せになるには親を捨てるしかなかった』から、再構成して紹介します。
本書では絶縁までの道筋だけでなく、これまであまり語られることのなかった親との絶縁後に起こった実体験も生々しく語られています。(初出:2023年9月15日)

【毒親から逃げる】実は家族と絶縁する人は意外に多い。なのに絶縁を人には言わない決定的な理由【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

家族と縁を切る人は意外と多い

 家族があまりに有害で、精神的虐待に耐えるという不健全な方法しか関係を保つすべがない人は世の中に大勢います。
 2015年のアメリカ合衆国の調べでは、40%以上の人が、人生に一度は家族と疎遠になったことがあると報告されています。

 親戚と疎遠になるケースが多いようですが、より近い身内と疎遠になるケースも多いようです。報告によると、なんと10%もの母親が現在、成人した子どもと疎遠になっています。

『Healing the Adult Children of Narcissists』の著者、シャヒダ・アラビ氏は、以下のような家族がいると自己申告した700人に対して調査を行いました。

■ナルシシストの母親:36%
■ナルシシストの父親:22%
■両親ともに毒親:14%
■日常的に共感性が欠如している親:86%
■自己中心的な人格が見られる親:84%
■極端な権利意識を持っている親:76%
■批判されたり軽んじられたりしたときに激しく怒る親:74%

 ケンブリッジ大学の家族研究センターと慈善団体スタンドアローンの共同プロジェクト「隠れた声―成人後に疎遠になる家族―」には、実に800人以上が協力しました。
 その800人には、子どもと疎遠になった親と、親と疎遠になった子どもの両方が含まれ、世代間で関係が疎遠になることについて2つの側面から光を当てています。

 調査によると、次のことがわかっています。

■親と疎遠になったアダルトチルドレンのうち、半分以上が自分のほうから連絡を絶ったと言っている。
■5~6%の親が、自分のほうから連絡を絶ったと言っている。
■親と疎遠になったアダルトチルドレンのうち、79%が母親との関係を維持する未来が見えないと感じた。
■親と疎遠になったアダルトチルドレンのうち、71%が今後一切、父親との関係を維持できないと感じた。

 調査に参加したアダルトチルドレンに、親に求めていたものを尋ねたところ、「彼らは『もっと親密でなごやかな、愛情を感じられる関係を求めていた』と答えました。
 そして、『批判的で辛辣な母親でいてほしくなかった、子どもを傷つける態度をとったらそれを認めてほしかった』と言いました。

 また、彼らは父親に『もっと子どもの人生に興味を持ち、配偶者を含めた他の家族に対して、子どものために真正面から立ち向かってほしかった』」と答えています。

 この調査に回答した人たちの考えや気持ちが、あなたにもよくわかるのではないでしょうか。
 40%近くの人が少なくとも一度は家族と疎遠になったことがあるという事実が、あなたの決断を後押ししてくれることを願っています。

 これほど多くの人たちが家族と疎遠になっているという事実をなぜ今まで知らなかったのか、疑問に思うかもしれません。
 もしあなたと同じような境遇の人たちが全員、虐待された事実を報告していたら、この割合は40%を優に超えるでしょう。

 しかし、虐待を報告しない人は大勢います。
 家族の秘密を外に漏らさないよう、露骨に、あるいは巧妙に支配されてきたから
です。