創業以来の赤字からV字回復を目指す住友化学の岩田圭一社長(4月30日の事業戦略説明会)創業以来の赤字からV字回復を目指す住友化学の岩田圭一社長(4月30日の事業戦略説明会) Photo by Ryuichi Kanayama

住友化学が創業以来の危機を迎えている。2024年3月期に医薬品子会社とサウジアラビアの石油化学事業で巨額の減損損失を計上し、過去最大の3100億円の赤字に陥る見通し。4月30日に開かれた事業戦略説明会で、岩田圭一社長が国内外で約4000人の人員削減などのリストラ策を公表したが、市場は厳しい評価を変えていない。最高値から3分の1に落ち込んだ株価を反転させるきっかけはあるのか。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)

過去最悪の3100億円の赤字
構造改革を公表も市場に届かず

 創業以来の巨額の赤字にあえぐ住友化学は4月30日に事業説明会を開いた。本来なら「強靱な事業体質への変革、再成長に向け聖域のない抜本的改革を、スピード感を持って進めていく」という岩田圭一社長が年頭所感で示した方針を改めて打ち出す場だった。

 しかし、結果は昨年11月、今年2月に続く3度目の業績下方修正で、2024年3月期に過去最悪の3120億円の連結赤字に陥る見通しを発表する羽目となった。会見当日の同社の株価の終値は前日比4.8%安の337.3円となり、5月8日時点の終値も329.7円と反転の兆しは出ていない。

 住友化学が創業以来、過去最悪の赤字に陥ったのは、製薬子会社である住友ファーマやサウジアラビアなどで展開する石油化学事業で巨額の減損損失を計上したためだ。

 事業説明会で、岩田社長は今後進める構造改革の中身を打ち出した。具体的には、住友ファーマの北米における1000人超の人員削減や販管費の削減、農薬の新製品の出荷増、半導体材料設備の増強などに取り組む。結果、24年3月期に1490億円の赤字となるコア営業損益は、来期には1000億円の黒字に転換する見通し。つまり、大胆なV字回復シナリオを示したのだ。

 しかし、このシナリオに株価は反応しなかった。市場の評価が低かったのはなぜか。実は、低迷する住友ファーマやサウジアラビアの石油化学事業といった課題への踏み込みが甘かったからにほかならない。つまり、中長期の成長戦略に疑念がもたれたのだ。次ページでは、事業説明会の岩田社長の発言を基に、住友化学のV字回復シナリオや今後の成長戦略を検証していく。