アステラス製薬Photo:PIXTA

主力製品の特許切れで崖を転がり落ちるように業績が悪化する「パテントクリフ」(特許の崖)は、新薬メーカーの宿命だ。崖からはい上がれない住友ファーマは、2年連続の赤字決算が見込まれ、瀬戸際に立つ。同じ轍(てつ)を踏みかねないのが、国内製薬3番手のアステラス製薬である。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)

住友ファーマは「創業以来の危機」
住友化学社長が言及

 国内製薬各社の2024年3月期第3四半期決算が出そろった中、話題をさらったのは住友化学の上場子会社である住友ファーマだ。

 同社は売上高の3分の1以上を占めていた統合失調症治療薬「ラツーダ」の独占販売期間が23年に終了したことに伴う構造改革費用などで、05年に大日本製薬と住友製薬が合併して以来の最終赤字を23年3月期に計上していた。

 主力製品の特許切れで崖を転がり落ちるように業績が悪化する「パテントクリフ」(特許の崖)は、新薬メーカーの宿命だ。後続の主力薬が軌道に乗るまで一時的に業績が落ち込むのは珍しいことではない。

 住友ファーマにおいては、崖からはい上がる計画が狂った。ラツーダに代わる主力候補に位置付ける前立腺がん治療薬、子宮筋腫治療薬、過活動ぼうこう治療薬の3製品は米国での販売が計画に届かない状態が続いている。加えてラツーダの後発医薬品が想定を上回るスピードで浸透した。24年3月期に見込んでいた最終赤字を800億円を1410億円まで大幅下方修正。第4四半期には、この3製品の減損テストを予定しており、さらに赤字が膨らむ可能性もある。

 昨年4月に発表した中期経営計画では、24年度には黒字に戻すというV字回復のシナリオが描かれていたが、実現は絶望的だ。借入金の増加も懸念材料で、決算説明会では証券アナリストから財務面を不安視する声が続出した。

 取り急ぎ株式の売却を進めて立て直しを図るとし、親会社である住友化学の岩田圭一社長が「創業以来の危機的状況」と言及するほどの事態の深刻さだ。住友ファーマがグループ内における構造改革の対象となるのは免れないだろう。

 24年第3四半期決算を終えて、「住友ファーマの惨状は人ごとではない」と業界関係者からささやかれているのが、国内製薬3位のアステラス製薬である。