金山隆一
#22
電子部品のプリント基板に使われる「ソルダーレジスト」で世界シェア首位の太陽ホールディングス(HD)が6月21日に開く株主総会で、佐藤英志社長が解任議案を突き付けられている。同社の業績は、佐藤氏のトップ就任後に右肩上がりが続いてきた。にもかかわらず、佐藤氏の再任を巡り、アクティビストや資本提携先などがこぞって反対に回る異常事態に陥っている。なかでも、関係者を驚かせたのが、佐藤氏に経営を委ねてきた創業家が再任に反対する姿勢を示したことだ。ダイヤモンド編集部の取材に応じた創業家の見解を明らかにする。

#18
三井化学が2027年をめどに石油化学事業を完全分社化する方向で検討に入った。石化事業とヘルスケアや半導体材料などの成長事業を2つに分け、成長事業ではグローバル戦略を加速させる。化学業界では中国の化学品の過剰生産で、国内では基礎原料となるエチレンとその誘導品を生産するセンターを集約する動きが進んできた。三井化学の一手は、石化再編の第2幕への布石といえる。実は、同社の橋本修社長の描く再編構想は大胆なものだ。三井化学が石化事業の分社化に踏み切る背景に加え、同社が描く再編の最終形について解説していく。

三菱ケミカルグループ、住友化学、三井化学の財閥系化学大手3社の2025年3月期決算が出そろった。住友化学は医薬品子会社の業績が大幅に改善し、黒字転換を果たしたほか、三菱ケミカルは前期比で減益となったが、傘下の田辺三菱製薬を売却するなど構造改革を進める。三井化学も計画を下回り、減益の着地となったが、3社で比べると、2社よりも早く構造転換に踏み切った三井化学の市場評価が高い。市場が三井化学を評価する理由とは。ただ、先行する三井化学にも懸念は存在する。その懸念とは。

トランプ関税ショックが吹き荒れる中、東京ガスが米国のシェールガス開発に巨額の投資を進めている。2023年12月に開発会社を4000億円で買収したのに続き、今春には米石油メジャーのシェブロンから800億円でテキサス州の権益を取得。米国のシェールガス関連で28年までに計7000億円超を投資する。取り扱うガスの量はLNG(液化天然ガス)換算で約1000万トンへ拡大し、現在東京ガスが日本に輸入するLNGに匹敵する規模になる見込み。米国への巨額投資に勝算はあるのか。東京ガスが描くグローバルのガス戦略の中身を探った。

#17
世界シェアトップの化学材料を複数持つデクセリアルズ。前身はソニーグループで半導体デバイスの材料などを手掛けてきたソニーケミカルで、本社は栃木県下野市に置く。ニッチ市場で高シェアを持つユニークな企業の急成長を導いてきたのが、2019年から社長を務める新家由久氏だ。株価はトランプ関税ショックの影響で、過去1年の最高値から4割下落しているが、新家氏は「今の株価は割安だ」と強気だ。新家氏を直撃し、同社が進める事業ポートフォリオ改革の中身に加え、大手化学メーカーが低PBR(株価純資産倍率)にあえぐ中で、同社が3倍前後の高評価を市場から得ている理由、次の成長領域などを明かしてもらった。

丸紅が住友ファーマから中国と東南アジアの医薬品販売事業を450億円で買収する。すでに中国と中東、アフリカの世界3エリアで事業を展開し、今回の買収で4拠点体制となる。丸紅は新興国での医薬品販売ビジネスを新たな成長領域に位置付け、2030年までに売上高1000億円超を目指す。同事業を指揮する幹部への取材を基に、ユニークなビジネスモデルの中身に加え、今回の大型投資を決めた狙い、年率10%という高成長が見込める根拠などを解説する。

#3
トランプ米政権の相互関税を巡り、米アラスカ州のLNG(液化天然ガス)輸出事業が日米間の交渉カードに浮上してきた。ベッセント米財務長官が4月8日、日本との協議にあたり同事業を重視する姿勢を示した。ただ、同事業は7兆円近い巨額投資が必要になるとみられ、日本にとっては中東から輸入するLNGよりも割高になる可能性がある。同事業を巡る、日本のガス業界やプラント業界などが抱える懸念を明らかにするとともに、米国からのLNGの購入圧力の回避策を模索する。

トヨタ自動車グループの総合商社、豊田通商が全米最大級の自動車リサイクル企業を9億700万ドル(約1344億円)で買収する。トランプ米政権は鉄鋼とアルミに25%の関税を課し、4月にも自動車への関税率もアップすると表明しているが、これをバネに、トヨタのEV(電気自動車)シフトにも対応できる体制をいまから準備していく。ただ、買収する企業の市場の評価はPBR(株価純資産倍率)でわずか0.6倍。これに2倍のプレミアムを付けた価格で全株を買い取る。高値づかみではないのか。大手商社といえば世界で最も有名な投資家バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが大手5商社の株を買い増していることが明らかになり、日本株全体の再評価につながったが、豊田通商は業績では6番目でバフェットには買われていない。トランプ大統領の懐に切り込む大型投資は吉と出るか、凶と出るか。

#16
脱炭素と中国の過剰投資で成長の未来が描けない化学事業。しかしレゾナック・ホールディングスからパーシャルスピンオフ(部分分離)という手法で独立を目指す化学会社クラサスケミカルは九州唯一の大分コンビナートを運営し、アジア大陸に近い立地と独自の川下誘導品を武器に2年後のIPO(新規株式公開)を目指している。内需の縮小でエチレンセンターの統廃合が進む国内の石油化学業界だが、大分の石油化学事業だけで100億円近い営業利益を稼ぎ出すクラサスはいまのところ単独での成長戦略を描く。成長の源泉は何か。今年1月1日に分社化したクラサスケミカルの福田浩嗣社長を直撃した。

トランプ米大統領の登場で、化石燃料復活と高関税時代到来というチャンスとリスクを抱える資源貿易商社、三井物産の役員人事が発表された。つぶさに見ると「次期社長候補」として、ある人物が浮かび上がる。2年後に任期を終える堀健一社長の後任候補を探った。

#15
中国の化学品の過剰生産による市況低迷で低稼働率にあえぐ化学メーカーは、大胆な事業構造改革や伝統的な化学品事業からの撤退、半導体材料事業への経営資源シフト、脱炭素が必須のコンビナートのエチレン製造設備停止などに動いている。課題が山積する中で、問われているのが各社のリーダーの手腕だ。では、各社はどんなトップを起用してこの難局を乗り越えようとしているのか。主な化学メーカーのトップ人事の行方を占う。

トランプ米大統領の登場で、化石燃料復活と高関税時代到来というチャンスとリスクを抱える資源貿易商社、三井物産の役員人事が発表された。つぶさに見ると「次期社長候補」として、ある人物が浮かび上がる。2年後に任期を終える堀健一社長の後任候補を探った。

#10
信越化学工業が中国による化学品の過剰生産や脱炭素対策にあえぐ化学大手を横目に快進撃を続けている。塩化ビニール樹脂(塩ビ)と半導体材料の二大収益源を育て、信越化学を世界トップクラスの化学会社に押し上げた中興の祖、金川千尋会長が2023年に96歳で死去したものの、16年から社長を務める斉藤恭彦氏はこの8年で株価を3.5倍、連結純利益を3倍強に押し上げた。さらに、足元では半導体製造装置企業の買収や、中国への投資、56年ぶりの国内工場の新設といった金川時代にはなかった戦略を打ち出し、「信越2.0」のフェーズに入ったようにも見える。斉藤社長が率いる信越化学の今後の成長の可能性を探った。

#7
日本の製造業の基盤である石油化学コンビナートが大きな岐路に立たされている。エチレンプラント(ナフサ分解炉)から排出される二酸化炭素(CO2)の削減と中国の化学品の過剰生産の影響で低迷が続く稼働率の向上のために、国内に12あるエチレンセンターの能力削減が始まっているのだ。国内大手が合従連衡に動いているが、再編がさらに加速する可能性もある。日本のコンビナート再編の先行きを大胆に予想。生産を停止する可能性のあるコンビナートを挙げるとともに、大手首脳への取材を基にしたコンビナート再編の最終形も示す。

#6
2024年3月期に過去最大の最終赤字に沈んだ住友化学が事業構造改革を加速させている。サウジアラビアの大型石油化学事業「ペトロ・ラービグ」や医薬品事業の拡大を目指す、故米倉弘昌元社長の路線を修正し、事業の中心を農薬と半導体材料にシフトする。さらに、ラービグの再建策や医薬品子会社、住友ファーマの切り離し方針など大胆なリストラも相次ぎ打ち出している。ラービグのリストラの舞台裏を明かすほか、次なるリストラ候補も予想する。巨額赤字からのV字回復を目指す住友化学の次の一手とは。

#5
2024年3月期に過去最大の最終赤字に陥った住友化学が構造改革を加速させている。巨額赤字の要因となった石油化学と医薬品に代わり、祖業の農薬と半導体材料を事業の中核に据える。8月には経営の足かせとなってきたサウジアラビアの石油化学事業ペトロ・ラービグへの出資比率の引き下げを決めるなど大胆なリストラにも踏み切った。岩田圭一社長が、今後同社がどのように稼いでいくか、各事業が持つ強みを挙げながら明かす。一方、切り離しを検討している傘下の住友ファーマの行く末や、石油化学事業の再編についても語った。

伊藤忠商事が、成長投資に巨額の資金を投下し始めた。セブン&アイ・ホールディングスの創業家による買収(MBO)に伊藤忠が出資する方針が明らかになっているが、これに先行してデサントの完全子会社化に向けた追加TOB(株式公開買い付け)に1800億円、ブラジルの鉄鉱石権益の買い増しに1200億円、測量大手パスコを持ち分法適用会社にするために77億円のTOB、川崎重工業子会社のカワサキモータース20%資本参加に800億円――4件で約4000億円の投資を決めた。セブンのMBOはファミリーマートを子会社に持つ伊藤忠の資本参加が独占禁止法に抵触する可能性も指摘されているが、これが成立しなくとも2年後の連結純利益1兆円に向け、大手商社トップ奪還が射程に入っているようだ。

#6
BtoB(法人間取引)の原料供給が主流だった伊藤忠商事の食料カンパニーが、同社傘下のファミリーマートとの連携で新ブランドを作り、BtoC(消費者向け事業)に乗り出そうとしている。伊藤忠はこれを、連結純利益で1兆円カンパニーを目指すキーワード「利は川下にあり」の代表例にしようとしている。三菱商事、三井物産を超えるための、伊藤忠の秘策に迫る。

#3
変動が激しい再生可能エネルギーの有効活用策として蓄電池が脚光を浴びている。政府の補助金もあり、電力・ガス、石油元売り、情報通信、鉄道、不動産、商社、金融リース、新電力などの企業が日本各地で大型蓄電所の開発に乗り出した。伊藤忠商事も大型蓄電所や太陽光発電、秋田県沖での大型洋上風力発電を計画。パートナーはJERA、大阪ガス、関西電力、カネカ、東急不動産、東京都、グーグルと多岐にわたる。彼らは伊藤忠の何に期待しているのか。実は伊藤忠は1990年代から蓄電池の可能性を見越して事業を広げてきた。安部泰宏電力・環境ソリューション部門長に課題とリスクを聞いた。

#2
伊藤忠商事が買収した、旧ビッグモーター(現WECARS)の不正の根の深さが次々と明らかになっている。保険金の不正請求では約6万件超の水増しの疑いが発覚。事故車を修理歴がないと偽って販売していた問題も表面化した。こうした不祥事の再発リスクを抱えてでも、中古車ビジネスに挑戦する伊藤忠の狙いは何か。EV(電気自動車)時代を見据え、中古車ビジネスとエネルギー事業を掛け合わせる伊藤忠、WECARSの秘策に迫った。
