金山隆一
三菱商事 「最強伝説」の終焉#5
三菱商事が、再建を支えてきた千代田化工建設を連結子会社から持ち分法適用会社へと移行させる。2019年に700億円で取得した優先株を償還して約900億円を回収し、保有比率は普通株ベースの33.4%を維持する。表向きの理由は財務正常化と自立支援だが、市場では将来的な普通株売却をにらんだ「出口戦略」との見方も浮上する。三菱商事は約200億円の投資リターンを確保し、千代田化工はプライム市場復帰を視野に入れる姿勢を示す。両社の説明と市場観測を交錯させながら、資本関係見直しの本質と残る33.4%の意味を読み解く。

日本製鉄による米USスチール買収が、プラント物流・メンテナンスの雄である山九に新たな局面をもたらしている。日鉄の米国進出に伴う巨額の設備更新案件。4%の株式を保有するパートナーでありながら、中村公大社長は「相当なリターンがなければ難しい」と冷静な姿勢を崩さない。背景にあるのは、日本の産業を支える「技能者」の価値が正当に評価されていないという構造的課題だ。国内コンビナートの老朽化と人手不足が深刻化する中、協力会社の事業承継まで支援し、現場を守り抜こうとする同社の「現場第一主義」の真意と、急騰する株価の裏側にある経営改革の全貌を追った。

米国とイランの緊張が高まり、ホルムズ海峡が実際に封鎖され、市場が揺れている。その影響は原油だけにとどまらない。実は日本にとってより神経質なのはLNG(液化天然ガス)だ。三井物産、三菱商事といった商社は中東資源ビジネスに深く関与しており、発電燃料を消費するJERAや東京ガスは価格高騰の直撃を受ける立場にある。しかも、日本の石油備蓄は約250日分確保されている一方、LNGは構造的に長期備蓄が難しく、実質的な余裕はわずかしかない。ホルムズ海峡の緊張は、供給量以上に「価格」と「備え」の弱点を突き、日本企業の資源戦略の脆弱(ぜいじゃく)性をあぶり出し始めている。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、日本のLNGの調達構造と企業戦略の盲点を追った。

#23
日本の石油化学産業でかつてない地殻変動が起きる中、相次ぐ石化再編の主導的な役割を果たしているのが、三井化学の橋本修社長だ。業界では在任6年目のトップの去就に注目が集まっている。同社のトップ人事は、単なる一企業のトップ交代にとどまらず、石化再編の行方そのものを占うテーマでもあるからだ。いま三井化学は構造改革の「設計段階」から「実行段階」へ移行しており、誰がかじ取りを担うかは、そのスピードと深さを左右する。ポスト橋本の有力候補の実名とともに、本命・対抗の二つのシナリオを明らかにする。

伊藤忠商事が日立建機への出資比率を33.4%へ引き上げ、経営の重要事項を左右する「拒否権」を掌握した。2027年の「ランドクロス」への商号変更を前に約1800億円という巨額の追加投資を断行。しかし市場では、PERや利回りの観点から「高値つかみ」を懸念する声も根強い。生活産業に強みを持つ伊藤忠が、あえて機械分野への深入りを急ぐ「執念」の正体を追う。

#25
積水化学工業が2月17日、6年ぶりのトップ交代に踏み切った。3月に社長に就く清水郁輔氏(61)は、2030年度の売上高2兆円の達成に向け、最大3000億円規模のM&A(企業の合併・買収)を盛り込んだ成長戦略も打ち出した。2兆円目標の達成には足元から7000億円も上積みが必要となる。将来の成長の柱の一つが、軽くて曲がるペロブスカイト太陽電池だ。構造改革で築いた盤石の収益基盤を土台に、次世代技術への注力で「攻め」へ転じる意思表示といえる。社長交代会見の清水新社長の発言から成長戦略の青写真の全貌を探った。

石油化学業界はこの1年で、国内に12カ所ある石油化学コンビナートの統合・再編がさらに進んだ。2026~27年度にかけて千葉では四つあるエチレン製造拠点が二つに集約され、川崎も二つを一つに統合。西日本では地域の異なる製造拠点の再編の方向も示された。国内の製造拠点は8カ所に集約され、過剰供給体制が大きく見直される。また、三井化学と出光興産、住友化学は国内の汎用樹脂事業の統合を発表するなど、石油化学業界に再編の嵐が吹き荒れている。この流れは2026年にどうなるのか。石油化学工業協会の工藤幸四郎会長(旭化成社長)は「26年は決断の年。高機能品でもアライアンスが進む」と断じる。中国の化学品の過剰供給による市況低迷に苦しんできた日本の石油化学産業はどう変化していくのか。

#24
三井化学は2月上旬、橋本修社長の後任に市村彰浩常務執行役員を充てるトップ人事を発表した。今回のトップ人事は単なる世代交代ではない。橋本氏を会長に、市村氏を社長に据える布陣の裏には、足元で加速する石油化学再編を次の段階へ進める意図が透けて見える。三井化学の「ツートップ」体制の狙いを明らかにし、今後の業界再編の行方を占う。

伊藤忠、丸紅、住友商事の三大商社が名を連ねる伊藤忠丸紅住商テクノスチールで、元部長による7億円詐欺事件が発覚した。容疑者は丸紅出身で、商社ブランドを「信用の増幅装置」として悪用し、本社応接室を舞台に偽造書類で融資を引き出した疑いがある。だが事件は単なる一社員の逸脱行為ではない。商社再編の成功モデルとされてきたJV(合弁)体制の陰で、誰も正面から向き合わなかった「管理の空白」が明らかになったからだ。商社ブランドの信用を悪用する土壌がなぜ形成され、どの段階で見過ごされたのかが問われている。

洋上風力発電ビジネスは三菱商事の撤退や資材価格の高騰で急ブレーキがかかっているが、ゼネコンやエンジニアリング会社は投資を続けている。準大手ゼネコンの戸田建設は長崎・五島で日本初の商業用浮体式洋上風力を稼働させたほか、JFEエンジニアリングは海底に据え付ける着床式に加えて、海に浮かべる浮体式基礎にも本格参入する方針だ。両社に共通するのは「価格競争の前に、まず産業をつくる」という発想。逆風の中でなぜアクセルを踏むのか。

#23
日本の石油化学産業でかつてない地殻変動が起きる中、相次ぐ石化再編の主導的な役割を果たしているのが、三井化学の橋本修社長だ。業界では在任6年目のトップの去就に注目が集まっている。同社のトップ人事は、単なる一企業のトップ交代にとどまらず、石化再編の行方そのものを占うテーマでもあるからだ。いま三井化学は構造改革の「設計段階」から「実行段階」へ移行しており、誰がかじ取りを担うかは、そのスピードと深さを左右する。ポスト橋本の有力候補の実名とともに、本命・対抗の二つのシナリオを明らかにする。

病害、市況低迷、巨額赤字――。20年にわたり「失敗事業」と見なされてきた丸紅のインドネシアの植林・パルプ事業の「ムシパルプ」。東京都の1.3倍に及ぶ広大な植林地で樹種転換を進めた結果、累積投資は数千億円に膨れ上がった。IRR(内部収益率)やROIC(投下資本利益率)を重視し、数年で成果が出なければ撤退するのが現代商社の鉄則だが、なぜ丸紅は既存の投資基準の枠に収まらない判断を下してまでこの地にしがみ付いたのか。担当幹部への直撃取材で見えた、鉄鉱石やLNGとは異なる「再生可能資源」のポテンシャルと、丸紅が手にした三つの価値を解き明かす。

千葉と大阪にコンビナートを持つ三井化学は2025年、エチレンプラントの集約や地域を超えたコンビナートの連携、さらには石油化学事業の分社化、合成樹脂の企業再編にまで乗り出した。これに続き、次はどんな手を打ってくるのか。橋本修社長が日本にとどまらずアジアを巻き込んだ化学業界再編の動きを予想した。

伊藤忠、丸紅、住友商事の三大商社が名を連ねる伊藤忠丸紅住商テクノスチールで、元部長による7億円詐欺事件が発覚した。容疑者は丸紅出身で、商社ブランドを「信用の増幅装置」として悪用し、本社応接室を舞台に偽造書類で融資を引き出した疑いがある。だが事件は単なる一社員の逸脱行為ではない。商社再編の成功モデルとされてきたJV(合弁)体制の陰で、誰も正面から向き合わなかった「管理の空白」が明らかになったからだ。商社ブランドの信用を悪用する土壌がなぜ形成され、どの段階で見過ごされたのかが問われている。

石油化学業界はこの1年で、国内に12カ所ある石油化学コンビナートの統合・再編がさらに進んだ。2026~27年度にかけて千葉では四つあるエチレン製造拠点が二つに集約され、川崎も二つを一つに統合。西日本では地域の異なる製造拠点の再編の方向も示された。国内の製造拠点は8カ所に集約され、過剰供給体制が大きく見直される。また、三井化学と出光興産、住友化学は国内の汎用樹脂事業の統合を発表するなど、石油化学業界に再編の嵐が吹き荒れている。この流れは2026年にどうなるのか。石油化学工業協会の工藤幸四郎会長(旭化成社長)は「26年は決断の年。高機能品でもアライアンスが進む」と断じる。中国の化学品の過剰供給による市況低迷に苦しんできた日本の石油化学産業はどう変化していくのか。

生成AI(人工知能)向けの高速・大容量半導体を巡る競争が激化する中で、半導体材料大手のレゾナック・ホールディングスが、半導体関連の日米欧の有力企業と組み企業連合「ジョイント3」を発足させた。レゾナックの高橋秀仁社長を直撃し、ユニークな連合体を発足させた狙いや今後の展開を明らかにしてもらった。また、同社が今後展開を広げる事業領域や、うわさされている同業のJSRの買収の可能性、「日の丸半導体」ラピダスとの連携の可能性についても聞いた。

米国はベネズエラを「解放」したのか、それとも「管理下」に置いたのか。マドゥロ大統領拘束後、ロドリゲス暫定政権が発足したが、市場や外交の関心はすでに次の局面に移っている。米国のトランプ政権の狙いは、ベネズエラの超重質油という扱いにくい資源を「当面使える形」で押さえることだったのではないか。国家再建や長期占領には踏み込まず、敵対勢力を排除したうえで、資源と制裁秩序だけを組み替える。それが、今回の介入ににじむ米国の「新しい現実主義」である。米国の新しい現実主義の“序章”ともいえるベネズエラ攻撃による原油市場や各国企業への影響を探った。

中国の過剰生産による市況低迷に喘いだ日本の化学業界。2025年は国内に12カ所あるエチレンセンターの集約・再編が大きく進み、川下の合成樹脂の分野でも企業再編の動きがあった。業界関係者の多くは「26年は各論が動く年になる」と語る。26年に起きる再編第2幕の動きを予想した。

日米の関税合意に盛り込まれた5500億ドル(約80兆円)の対米投資の詳細が明らかになってきた。第1号案件は電力やLNG(液化天然ガス)などエネルギー分野が対象になるとみられるが、米国側は「利益の90%を米国が受け取る」としている。果たして日本の国益にかなうのか。「対米80兆円投資」に出資や融資、融資保証などで主体的に関わる国際協力銀行(JBIC)の前田匡史会長を直撃し、実現の可能性や日本企業の関与、具体的に想定されているプロジェクトなどについて聞いた。

日米の関税合意に盛り込まれた5500億ドル(約80兆円)の対米投資の詳細が明らかになってきた。第1号案件は電力やLNG(液化天然ガス)などエネルギー分野が対象になるとみられるが、米国側は「利益の90%を米国が受け取る」としている。果たして日本の国益にかなうのか。「対米80兆円投資」に出資や融資、融資保証などで主体的に関わる国際協力銀行(JBIC)の前田匡史会長を直撃し、実現の可能性や日本企業の関与、具体的に想定されているプロジェクトなどについて聞いた。
