今年はやはり「女性の年」なのかもしれない。正確に言えば、女性の尊厳を取り戻す年である。
前回、峯岸みなみの坊主頭謝罪問題とインドの集団レイプ事件を絡めてそのことに触れたが、さらに大きくそのことを確信させる「アイドル」が現れた。マララ・ユスフザイ。パキスタン生まれの15歳の少女である。
Photo:AP/アフロ
アイドルというものは時代を象徴する存在だが、ある国の「現在と未来」を象徴すればその国のアイドルとなり、「世界」を象徴すれば世界的なアイドルとなる。マララちゃんはまさに、「世界の未来」を指し示す存在であり、その意味で世界のアイドルとなったわけである。彼女のことは日本のニュース番組でも、たびたび大きく取り上げられているのでご存じの方も多いかと思う。
アメリカのアフガニスタン侵攻後も、依然として強い勢力を持つタリバンは、3年前にパキスタン北部の一部地域を実効支配。その地域にマララちゃんも暮らしていた。タリバンはアフガニスタンでもそうだったが、女性に対する教育を認めず、さまざまな弾圧を行なった。その様子を、当時11歳だったマララちゃんはBBCのブログで克明に綴り、学校に通って勉強したいという気持ちやタリバンに対する恐怖心を世界に伝えた。
そのブログによれば、タリバンは「少女の通学を禁止したほか、多くの女子校を爆破し、登校すれば顔に硫酸をかけると脅しました。また女性が市場に買い物に行くことも禁止しました。このため、マララさんは通学しているのが判らないように、制服ではなく、地味な私服を着て、教科書も服の下に隠し持っていたということです」(NHK『ピックアップ@アジア』2012年10月16日放送より)。このような状況をブログで伝えていたわけだが、当然、この頃はマララちゃんもペンネームで書いていた。
その後、パキスタン政府はタリバン掃討作戦を展開し、マララちゃんが住んでいた地区も開放され、マララちゃんも実名を公表し、メディアにも積極的に出演し、公然とタリバンを批判するようになった。この時点でマララちゃんはすでに、パキスタンにおける反タリバン運動のアイドルとなっており、国民平和賞も受賞している。
一命を取り留めた銃撃事件で一躍、
世界で著名な人権活動家に
国民的人気を背景に、タリバン批判を続ける少女のことを、タリバンが快く思うわけもなく、マララちゃん殺害を決定する。そして、2012年10月9日、学校帰りにスクール・バスに乗り込もうとしていたマララちゃんを2人の兵士が銃で襲い、当時14歳のマララちゃんは頭部に被弾する。瀕死の状態で彼女はイギリスの病院に搬送され、奇跡的に一命を取り留める。5ヵ月にも及ぶ数回の手術を経て回復し、現在は元気にイギリスの女子校に通っている。いまは15歳になった。