人は動揺しネガティブな気持ちになると、心臓の鼓動が速くなり、落ち着きがなくなり、視線はぶれます。

 そんな時に有効なのが、この一点凝視法です。

 不安を感じる場面に直面したら、まず腹式呼吸で大きく深呼吸をしましょう。

 呼吸というのは、自分の意志で自律神経のバランスを調整できる貴重な方法です。

 緊張やストレスを感じると浅い呼吸になりますが、深呼吸をすることで副交感神経の働きが高まり、自律神経のバランスが整い、落ち着くことができます。

 あなたが日常生活で実践する時も、特別な道具は何も必要ありません。ボールペンのペン先であったり、パソコンの画面の一部をじっと見つめるだけで良いのです。

 短い時間で急激に集中力を上げたり、途切れた集中力を回復させることも可能です。たとえば起床直後や、練習や試合の前にも有効です。

 また頭がしっかりしている状態でも、やるべきことが多く注意力が散漫になってしまいそうな時にも使える手段です。

 塾高の選手も一点を見つめることで落ちつきを取り戻しました。ボールの縫い目や、バットのグリップ、グローブを一点凝視していると、視線が定まり、脳が「自分は動揺していない」と認識して、精神的に落ち着くのです。

 何かを見つめながら、ポジティブな言葉を口にするとより良いでしょう。

「自分はこのピンチを乗り切れる」

 一点凝視したのち、ボールやバットに向かってそう強く言い聞かせることで、自分はそうできると思えるようになり、ピンチも乗り越える心の準備ができるのです。

体の緊張をほぐすと
心の緊張もほぐれる

 人間は誰しも緊張をします。緊張をしない人間はいないといっていいでしょう。緊張は誰にでも起こりうる自然な現象です。

 2023年夏の甲子園、慶應の3回戦の相手は広陵高校でした。3ー0から1点ずつ返され、3ー2で迎えた7回。投手は小宅雅己君から鈴木佳門君に交代しました。1死2、3塁になり、主軸を迎えた時は手に汗を握りましたが、同点に追いつかれたものの後続を断ち切ったことが、その後のタイブレークの劇的な勝利につながったといえるでしょう。