創造性、意欲、感情の制御などを司る脳の前頭葉。使わないで楽をさせていると、気付かないうちに「前頭葉バカ」になるという。ベストセラー連発の精神科医が、「前頭葉バカ」の回避術を詳細に解説する。本稿は、和田秀樹『前頭葉バカ社会 自分がバカだと気づかない人たち』(アチーブメント出版)の一部を抜粋・編集したものです。
日本人が「バカ」になった
原因は前頭葉にあった
前頭葉は、人類が自然界の厳しい生存競争に勝ちぬき、生き残るために進化したといわれています。
前頭葉の主な働きには次のようなものがあります。
◆思考する
◆創造性を発揮する
◆やる気を出す
◆行動や感情をコントロールする
◆コミュニケーションをとる
◆集中力
◆応用力
◆変化に対応する
前頭葉を正しく使えていない状態を「前頭葉バカ」と表現することにしますが、前頭葉バカは「自分の頭で考えない」「変化をきらう」「前例を踏襲する」「創造性を発揮できない」「意欲がわかない」「新しいチャレンジをしない」といったことがあたりまえになります。
前頭葉は40代ぐらいから画像診断でわかる程度に縮み始めます。感情のコントロール機能や自発性、意欲、創造性が歳をとるごとに衰え、ますます前頭葉にラクをさせるようになります。
前頭葉にもっともラクをさせる方法が「前例踏襲」です。たとえば「行きつけのお店にしか行かなくなる」「一度うまくいった成功パターンをずっと続ける」。これらは前例を踏襲した前頭葉バカの状態です。
また、自分自身を振り返って、「すぐにイラッとする」「昔の成功体験にすがっている」「怒りがなかなか収まらない」「新しいことに挑戦しなくなった」「守りに入った」「感情の切り替えができない」と感じたなら、前頭葉バカが始まっているサインだと思ってください。
前頭葉を使わなくても、側頭葉や頭頂葉で情報処理や知的活動ができるため、前頭葉の老化に本人は気づきにくいのです。人間の脳は記憶を司る海馬よりもずっと先に、前頭葉からバカになっていきます。
「前頭葉バカ」の思考10パターン
あなたはいくつ該当しますか
前頭葉バカの人は複雑な情報を複雑なまま処理することが苦手です。これから紹介する10の思考パターンで、物事を単純化する傾向があります。普段の自分に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。
1・過度の一般化
同僚と仕事のやり方で意見の合わないことが一度でもあると、「あいつはもう仲間ではない、敵だ」と決めてかかるような考え方です。高齢者が事故を起こしたニュースを見ると、「やはり高齢者の運転は危ない」と短絡的に考えたり、進学校に通う子どもが放火事件を起こすと、「秀才は危険だ」と結論づける思考パターンです。
2・選択的抽出
相手に悪いところがひとつでもあると、「あの人はダメだ」とすべてを決めつける思考パターンです。