三菱電機Photo:JIJI

三菱電機が、物流子会社「三菱電機ロジスティクス」を売却する方針を固めたことが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。売却先は、物流大手のセンコーグループホールディングス。トラック運転手の人手不足が深刻化する「2024年問題」の影響で、業界再編の動きが一段と激しくなってきた。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

三菱電機が「三菱電機ロジスティクス」を売却へ
同業のセンコーによる買収で一段と進む業界再編

 三菱電機が、物流子会社の「三菱電機ロジスティクス」を売却する方針を固めたことが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。売却先は、物流大手のセンコーグループホールディングス(GHD)。近く発表する。

 三菱電機は、現在98%を保有する三菱電機ロジスティクス株の過半数を、センコーGHDに譲渡する。売却時の三菱電機ロジスティクスの時価総額は、最大で1000億円規模の評価になるとみられる。

 三菱電機ロジスティクスは、三菱電機の連結子会社から外れる。ただし、三菱電機は、全株は売却せずに20%以上を保有し続ける。特別目的会社(SPC)を設立し、このSPCが三菱電機ロジスティクス株を100%保有。センコーGHDと三菱電機はこのSPCに対して、それぞれ出資する形態を取る。

 三菱電機ロジスティクスの2023年3月期の売上高は1366億円で、営業利益は49億円。売上高の9割が三菱電機向けで、家電・オフィス向け製品や産業機器、公共・エネルギー関係や宇宙・通信関係の製品・システム、半導体・電子部品などの輸送事業を手掛けている。

 一方、買収するセンコーGHDは、傘下のセンコー(大阪市)が中核企業。物流センターの運営に強みを持ち、企業の物流業務を受託する3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)事業者である。24年3月期は売上高が7800億円、営業利益は297億円を見込む。

 今回の買収の背景にあるのは、トラック運転手の時間外労働の上限規制で輸送能力が不足する「2024年問題」。物流各社は、単独で従来のサービスを維持することが困難になりつつある。そのため、今月2日にAZ-COM丸和ホールディングスが、同業のC&FロジホールディングスにTOB(株式公開買い付け)を仕掛けた。さらに、同月9日にはロジスティード(日立製作所の上場子会社だった旧日立物流)が、電子部品大手アルプスアルパイン傘下のアルプス物流を買収することを発表している。

 いずれの買収も、企業規模の拡大で輸送ルートの効率化や倉庫などの省人化・自動化投資を進め、生き残りを図る狙いがある。

 今回の三菱電機ロジスティクスの買収劇で、業界再編が一段と加速するのは必至だ。実際、同買収の入札には、「佐川急便の親会社であるSGホールディングスや、米投資ファンドKKR傘下のロジスティードも買収提案をしていた」(ファンド関係者)という。

 業界内でさらなる再編が必要との危機感は強く、これからも同様の動きが断続的に起きるだろう。

 もっとも、M&A(企業の買収・合併)は結婚と同じだ。三菱電機ロジスティクスとセンコーGHDが今後、規模を拡大したことで「2024年問題」を乗り越え、業界の勝ち組として君臨できるかと言えば、必ずしもそうとは言い切れない。早くも、センコーGHDが三菱電機ロジスティクスの経営に苦労を強いられるという懸念が出ているのだ。

 次ページでは、それでも同社を手中に収めたかったセンコーGHDの思惑とともに、今後の経営が簡単ではない理由を明らかにする。また、三菱電機が三菱電機ロジスティクスを手放す理由についても解説したい。