イオンがダイエーを子会社化する。両社を単純合算すれば売上高は6兆円超に上り、業界2位のセブン&アイ・ホールディングスを大きく引き離す。このところ流通各社の買収劇に必ず姿を見せていたイオン。ダイエーまでのみ込んで買収戦略に突き進む“食欲”が、業界最後の再編の呼び水となりそうだ。
Photo:JIJI
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「かつてはライバルだったが、恩讐(おんしゅう)を超えて交われば、大きな効果を出すことができる」(岡田元也・イオン社長)
記者会見した岡田社長の胸には去来するものがあったに違いない。かつて盟主の座を激しく争ったこともあるイオンとダイエー。ダイエーは経営難から産業再生機構の支援を受けた後、丸紅とイオンがそれぞれ保有比率1位、2位の大株主として再建してきたが、ついにイオンが子会社化に踏み出す。
公正取引委員会の審査を受けた後、7月にも株式公開買い付け(TOB)を実施する方針。現在、約20%の持ち株比率を過半まで高める予定だが、仮に過半に届かなくても取締役を半分以上送り込むことで連結対象とする。これに関連して丸紅は5%だけ残して保有株を売却する。
ただ、いかに岡田社長の感慨が深くても、前期まで5期連続で最終赤字を垂れ流していたダイエーを再建するのは容易ではない。
イオンは今後、保有する物流インフラ、プライベートブランド商品、電子マネーなどを活用し、再建を図る構えだが、立ちはだかる障害は二つある。
一つ目は老朽化した店舗である。
ダイエーの店舗の平均築年数は約30年と老朽化が著しく、改装の投資負担は大きい。
後述するが首都圏での食品スーパーを強化したいイオンにとって、ダイエーの大型店舗は使い道が難しい。加えて、急拡大を続けたダイエーの不動産賃貸契約は不動産オーナーに有利なものが多く、「契約満了前の退店に関するペナルティが厳しい」(業界関係者)といわれる。法的整理ではなく、私的整理を選んだが故の足かせといえる。