Photo by Maya Wakita
2月に社長交代が発表された大手商社、丸紅。5年間にわたる朝田照男社長、勝俣宣夫会長体制の終焉に合わせ、丸紅の喉に刺さった骨も取り除かれようとしている。
その骨とは、丸紅が株式の約29%を保有し、筆頭株主でありながら、赤字を垂れ流すかつての流通の雄、ダイエーだ。
「総合商社としてのあらゆる機能を発揮する」──。
2006年、丸紅はそう豪語し、経営不安に揺れたダイエーを産業再生機構から698億円で買収した。だが、現在に至るまで復活の兆しさえ見えない。ダイエーは13年2月期、純損失50億円を見込み、5期連続の赤字が確実な情勢だ。丸紅の「ダイエー事業室」は、社内で不採算事業のレッテルを張られる始末となっている。
にもかかわらず、丸紅が損切りに動けなかったのは「ダイエー買収は、勝俣会長が社長時代に肝いりで決定し、それを財務担当役員として強く支援したのが朝田社長だった」(丸紅関係者)からだ。
だが、今年に入って潮目が大きく変わった。朝田社長自らが、ダイエー株売却に舵を切ったからだ。「ダイエーを売れば、丸紅の株価も上がるだろうか」。朝田社長は、周囲にそう漏らしているという。
念頭にあるのは、一昨年に伊藤忠商事が丹羽宇一郎前会長の“聖域”だった吉野家ホールディングスの全保有株式を処分し、この損切りが株式市場に高く評価されたという前例だ。
現体制の顔に泥は塗れないというしがらみが消えた丸紅が目下、株の譲渡を打診している相手はもちろんイオンだ。
ダイエーをめぐり、丸紅は06年にイオンと業務提携。イオンは株式の約20%を保有する第2位の株主になり、会長はイオン出身、社長は丸紅出身という現在の体制が出来上がった。