GWが終わり、次の祝日まで約2か月も空いてしまうこの時期は、何かとストレスがたまりやすい。仕事に慣れなかったり、職場の人間関係がうまくいかなかったりして、「会社に行くのが憂鬱だなあ」と思っている人もいるかもしれない。しかし、悩みを一つひとつ解決していけば、意外にスッキリと心が晴れていくものだ。
そこで今回は、2023年ベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販/トーハン調べ)となり、「もっと早く読んでいればと後悔すらした」「ぶっ刺さりすぎて声出た」と反響を呼び続けている『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉さんと、『「言葉にできる」は武器になる』の著者・梅田悟司さんに、自分の感情をコントロールする方法について聞いてみた。(構成/根本隼)

職場にいる「すぐ感情的になる人」と「とっさに自制できる人」の決定的な差Photo:Adobe Stock

感情的になる人は「すぐに口を開く」

Q. 相手の言うことに対し、つい売り言葉に買い言葉で反応してしまい、関係がこじれることがあります。感情的な反応をしないためのコツは何かありますか?

安達裕哉(以下、安達) 相手のムカつく発言に対して、キレずに対処するコツの1つが「すぐには口を開かない」です。私のかつての上司は、部下に怒りそうになったら「まずは6秒我慢する」ことを習慣にしていました。

 なぜかというと、6秒我慢している間に、怒りが収まるとともに理性が高まり、怒鳴り散らすのではなく、指導する姿勢に切り替えられるからです。

 ちなみに、脳科学的にも、理性的な判断を司る「前頭葉」が本格稼働するまでには3~5秒程度かかるともいわれているので、一定の合理性があるアクションなんだと思います。

梅田悟司(以下、梅田) シンプルですけど、体のメカニズムに合っている対応ですね。ほかにも、2つの対処法があります。

 1つめが「いったんその場を離れる」です。たとえば「ちょっとお手洗いへ失礼します」と言ってトイレに行く。こうやって場所を移動すると気分が変わって、自分の感情を客観視できるようになるので、自然と怒りが鎮まっていくんです

 席を外すのは一見失礼なようですが、みんなの前で怒るよりは、よっぽどマシだと僕は思います。移動先はどこでもいいですが、トイレが一番自然ではないでしょうか。

キレそうな相手を黙らせる「すごいひと言」

安達 もう1つは何ですか?

梅田 なかなか難しいかもしれないですが、自分の心に余裕がある場合に、「そういうことを言わせて申し訳ありません」と謝ることです。

安達 なるほど。確かに、売り言葉を相手が使うということは、そもそも何かしらの非が自分にあるかもしれないですもんね。

梅田 おっしゃる通りで、何もないところから売り言葉は出てきません。なので、売り言葉が出るような状況を作ってしまって申し訳なかった、ということです。

 ちなみに、これは自分が折れるとか、相手に勝たせるという意味ではありません。むしろ、自分が先に謝ることで下手に出ながら、「けんかを仕掛けているあなたの方が幼稚ですよ」と仄めかすことができるんです。

安達 そう考えると、結構深いひと言ですね。修羅場になりそうな状況を、早めに鎮火させる効果もありながら、相手にもチクリと刺すという。

とっさに自制できる人は「行動とともにやり過ごす」

安達 そういえば、私がコンサルタントだったときは、クライアントが失礼なことを言ってきたら、「おっしゃることはごもっともで、上司に相談したいので、お名前と内容をメモさせてください」と返していました。

梅田 なるほど。「言質をとりますよ」と、やんわり脅しをかけるわけですね。

安達 その通りです。そうすると、相手も「ヤバいな」と思って、それ以上は言ってきません。このテクニックで窮地を切り抜けたことは何度もありました。

 そこまでしなくても、相手の売り言葉に反応しそうになったら、怒りを抑えるために「紙に書く」という手法は有効です。梅田さんの「いったんその場を離れる」というやり方と、本質的には同じですね。

梅田 冒頭に「6秒待つ」という話がありましたが、何もしないで待つよりも、行動とともにその6秒間を「やり過ごす」方がずっと簡単です。

 もし密室だったら、「ちょっと空気を入れ替えましょう」と言って、窓を開けるのもいいと思います。閉鎖的な空間ではなくなることで、お互いに気分が変わる可能性があるからです。

安達 それも面白いアイデアですね。『頭のいい人が話す前に考えていること』でも書いたのですが、仕事でも日常会話でも、感情的になったらその時点で「負け」。相手の信頼を確実に失います。

 怒っているときは、軽率な判断をしてしまうのが人の常ですし、いつの時代も「口はわざわいの元」です。取り返しのつかない発言をする前に、「相手の言葉に反応してはいけない」ということを自分に言い聞かせて、冷静になれる時間を数秒とるのがベストですね。

(本稿は、『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉さんの対談記事です)

安達裕哉(あだち・ゆうや)
Books&Apps運営、企業コンサルティング
Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。仕事、マネジメントに関するメディア『Books&Apps』を運営する一方で、企業の現場でコンサルティング活動を行う。著書に、2023年ベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販/トーハン調べ)となった『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)など。