大手ゼネコン上場4社の2024年3月期決算が出そろい、清水建設が上場来初の営業赤字に沈んだ。しかも新たな中期経営計画は「弱気」ともいえる超保守的な内容で、市場関係者から厳しい評価が下った。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
“大赤字”となった麻布台ヒルズ
業界最大手、鹿島の2024年3月期の連結営業利益は前期比10.3%増の1362億円だった。4社で唯一の増収増益、営業利益が1000億円を超え、業界の横綱の貫禄を見せつけた。
大林組、清水建設、大成建設は増収減益となったが、中でも清水建設は、営業損益が246億円の赤字(前期は546億円の黒字)となった。清水建設にとって営業赤字は、上場以来初。24年3月期は、清水建設の独り負けとなった(下図参照)。
5月13日の決算発表を受け、清水建設の株価は下落に転じた。13日終値は、前営業日の10日終値に比べて81円減の949円まで下がった。
清水建設が営業赤字に陥った大きな原因は、施工を請け負った森ビルの大型プロジェクト「麻布台ヒルズ」だ。その目玉である高さ日本一の超高層ビル「森JPタワー」は、清水建設が初めて300メートル以上の高層ビル建設工事にチャレンジしたプロジェクトだった。
麻布台ヒルズのプロジェクトでは、不運が続いた。新型コロナウイルスが猛威を振るって工程が遅れ始め、さらにウクライナ危機で加速した物価上昇にも見舞われた。終盤は工期を死守するために、建設作業員をかき集めて大量投入した。これらにより、大幅に採算が悪化し、工事損失引当金の計上に迫られた。
“大赤字”となった麻布台ヒルズが竣工したものの、これで一件落着というわけにはいかない。清水建設は引き続き、“低空飛行”を余儀なくされる可能性が高いのだ。
それは、決算に合わせて公表した、24~26年度の3カ年の新しい中期経営計画が示す。26年度の総売上高の目標は、23年度の実績に比べて1155億円減の1兆8900億円。トップラインが落ち込むという超保守的な内容なのだ。
中計に対しても、市場は厳しい評価を下したようだ。新中計発表後、清水建設の株価はさらに下落。17日終値はとうとう900円を割り、879円に落ち込んだ。
そもそも、なぜ清水建設は超保守的な新中計を策定せざるを得なかったのか。