ゼネコン業界再編の“主役”に躍り出ているのは、大和ハウス工業をはじめとするハウスメーカーや、伊藤忠商事などの総合商社といった異業種プレーヤーだ。業容拡大に向け、業界の垣根を越えてゼネコンに触手を伸ばしている。狙いは、66兆円といわれる巨大なゼネコン市場の取り込みだ。特集『ゼネコン複合危機 全国2565社ランキング』の#2では、異業種プレーヤーがゼネコンに“領空侵犯”を仕掛ける狙いに迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
異業種によるゼネコン買収
先駆けは大和ハウス工業
異業種プレーヤーによるゼネコン買収の先駆けといえるのが、大和ハウス工業だ。
大和ハウスは2012年、準大手ゼネコンのフジタを500億円で買収。これをきっかけに、大和ハウスは急成長を遂げた。売上高は12年度の約2兆円から10年間で2倍を超える約4兆9000億円にまで拡大したのだ。
もちろん、当時約3100億円だったフジタの売上高が上乗せされただけではない。大和ハウスはフジタを手に入れたことで、デベロッパーとゼネコンの機能を掛け合わせた“ハイブリッドプレーヤー”に変身。自ら開発する物流施設や商業施設などについて、土地の仕入れから商品企画、設計施工、運営、売却までの「川上から川下」を一気通貫で手掛けるようになったのだ。これは、デベロッパーにもゼネコンにも容易に構築できないビジネスモデルだった。
この大胆な戦略により、とりわけ物流施設の分野において、大和ハウスは開発延べ床面積で業界トップに上り詰めた。買収したフジタとのシナジーを生かした、大和ハウスの「攻めの姿勢」が奏功したのだった。
その後、ライバルのハウスメーカーも大和ハウスに倣えとばかりに、ゼネコンを傘下に収める動きに打って出た。住友林業は17年、準大手ゼネコンの熊谷組と資本業務提携を結び、積水ハウスは19年に中堅ゼネコンの鴻池組を連結子会社化した。
ゼネコン再編の主役は今、異業種プレーヤーといえるのだ。そんな中、ゼネコン業界で注目を集めているのが伊藤忠商事である。
伊藤忠は21年12月に準大手ゼネコンの西松建設と資本業務提携を結んだほか、23年5月にはオリエンタル白石とも資本業務提携を結んだ。同年8月には建材メーカーの大建工業を完全子会社化している。五大総合商社(三菱商事、伊藤忠、三井物産、住友商事、丸紅)の中で、ここまで建設関連の会社に触手を伸ばすのは珍しい。
そしてゼネコン業界の内外で注目されているのは、西松建設の行方だ。ある市場関係者は「西松建設は近い将来、伊藤忠の完全子会社になるのではないか」とみる。
果たして、伊藤忠は西松建設の完全子会社化に踏み切るのか。そもそも、伊藤忠はなぜゼネコンに触手を伸ばすのか。
次ページからは、伊藤忠が建設分野に進出し始めた事情を解説していく。また、伊藤忠の建設・不動産部門の幹部に、西松建設の行く末について直撃質問した。