政府公募の洋上風力発電プロジェクトコンペ「第2ラウンド」の選定結果が、ついに出そろった。最後のエリアとなった秋田県八峰町・能代市沖は、石油元売り最大手ENEOSホールディングスの子会社、ジャパン・リニューアブル・エナジー陣営が勝利を収めた。連載『エネルギー動乱』の本稿では、第2ラウンドの結果を振り返るとともに、第2ラウンドの「裏バトル」ともいえるゼネコン大手の実名入り受注結果もお届けする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
JRE初勝利で
ENEOSの「減損爆弾」阻止
「やはりバラけましたね」
政府公募の洋上風力発電プロジェクトコンペ「第2ラウンド」で、最後に公表された秋田県八峰町・能代市沖(以下、秋田県北部沖)の選定結果を見て、総合商社のある幹部は、そうつぶやいた。
秋田県北部沖は、石油元売り最大手のENEOSホールディングス(HD)の子会社で、再生可能エネルギー専業大手のジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE、4月からENEOSリニューアブル・エナジーに社名変更)陣営が、国内最大の発電事業者であるJERA陣営、東京電力リニューアブルパワー陣営を制した。
『ENEOSの「減損爆弾」が爆発秒読み!?命運握る洋上風力「秋田県沖プロジェクト」の結果を大予想』で伝えた通り、JREが第2ラウンド2連敗となれば、ENEOSHDは1900億円にも上るJREの巨額買収に絡む「のれん代」の“減損爆弾”が爆発必至だった。JREが初勝利を収めたことで、ENEOSHDの減損爆弾を「ひとまず」止めることに成功した。
しかし、あくまで「ひとまず」である。秋田県北部沖プロジェクトはJREを「三重苦」が襲う見込みで、業界関係者の間で「毒まんじゅう」と言われた“赤字案件”だからだ。JREにのしかかる三重苦については、後日詳報する。
ちなみにダイヤモンド編集部は、秋田県北部沖はJERA陣営が優勢と予想したが、結果は逆となった。
三菱商事陣営が全3エリアを総取りした第1ラウンドとは異なり、第2ラウンドは四つのエリアをJRE陣営(秋田県北部沖)、JERA陣営(秋田県中部沖)、ドイツのエネルギー大手であるRWE陣営(新潟県沖)、住友商事陣営(長崎県沖)の4陣営がそれぞれ分け合う結果となった。第2ラウンドの勝者はいよいよ、プロジェクトを本格的に進めることになる。
実は第2ラウンドの陰で、「裏バトル」も繰り広げられていた。それが、ゼネコン・マリコンによる受注獲得競争だ。
日本で洋上風力発電事業を進めるには政府公募のコンペを勝たなければならず、ゼネコン・マリコンは「勝ち馬」に乗るために事業者を慎重に見極めて、営業攻勢を仕掛けた。これに対し、発電事業者は確かな実績とコスト競争力を持ち、コンペの勝利に貢献できるゼネコン・マリコンをパートナーとして選んだ。
第1ラウンドは、三菱商事が3エリアを総取りした影響で、鹿島陣営が施工を“独占”することになった。
果たして、第2ラウンドは――。
次ページでは、業界関係者への徹底取材に基づき、第2ラウンドの裏バトルで勝者となったゼネコン・マリコンの実名をつまびらかにする。その結果、洋上風力発電分野に関するゼネコン・マリコンの優勝劣敗が鮮明となった。