ゼネコン複合危機 全国2565社ランキング#3Photo by Ryo Horiuchi

売上高1兆円を超えるスーパーゼネコンの一角、大成建設はM&A(企業の合併・買収)で業界再編を仕掛けると豪語していた。しかし、自社が手掛ける大型工事で不祥事を連発し、それどころではなくなっている。さらに下請けからの逆襲も受け、大成建設はスーパーゼネコン陥落の危機にさらされている。特集『ゼネコン複合危機 全国2565社ランキング』の#3では、大成建設の苦境をつまびらかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

世田谷区役所、札幌再開発で不祥事
M&Aどころではない大成建設

「こっちだよ!」。ヘルメットに作業着姿の男たちの怒号が飛び交っていた。

 スーパーゼネコンの一角、大成建設が施工を請け負う東京・世田谷区役所本庁舎建て替え工事は、日曜日を除く週6日のスケジュールでほぼ行われている。

 昨今は働き方改革に伴い、国や地方自治体が発注する公共工事は週休2日のスケジュールで行われるのが一般的になっているが、世田谷区役所本庁舎の建て替え工事は“例外”だ。なぜなら、すでにスケジュールが大幅に遅れているのである。

 大成建設は2023年7月、世田谷区役所東庁舎に関する1期工事について、世田谷区に最大8カ月の工期延伸を申し入れた。これに伴い、東庁舎、西庁舎に関する2~3期工事についても、最大14.5カ月延びることが判明した。その後、世田谷区と協議して工程を見直したものの、計19.75カ月の工期遅延という異例の事態となった。

 大成建設によると、工期遅延の原因は施工計画の甘さに加え、工程管理にも問題があったとしている。

 世田谷区役所本庁舎の建て替え工事は、住民窓口などの庁舎機能を維持しながら既存の複数ある庁舎を順番に解体し、建て替えたものを最終的に一つの庁舎に接続するというもの。当初から難工事が予想されていた。

 この工事の入札において、大成建設は予定価格約421億円を大幅に下回る331億円で提案し、応札した鹿島と清水建設を制して落札した。この超安値入札にはライバルも驚き、「赤字必至」とうわさされていたが、それが現実のものとなってしまったのだ。

 大成建設の失態は世田谷区役所本庁舎の建て替え工事にとどまらない。

 今年3月、NTT都市開発が手掛ける北海道・札幌の大型複合ビル工事で、施工を請け負った大成建設の現場担当者が、鉄骨の傾きやゆがみに関する数値を改ざんしてNTT都市開発側に虚偽報告をしていたことを公表。このままだとビルが法令基準を満たさない恐れがあり、建設していた地上部と地下部を解体して建て直すという前代未聞の事態となっている。

 かねて大成建設の相川善郎代表取締役社長は、M&A(企業の合併・買収)による業界再編を仕掛けると宣言していた。しかし、不祥事の続出でそれどころではなくなっている。

 24年3月期第1四半期決算では、世田谷区役所本庁舎建て替え工事に関する工事損失引当金を積んだことから、第1四半期としては14年ぶりの最終赤字23億円に沈んだ。業績だけでなく、大成建設のレピュテーションはダダ下がりなのだ。

 さらに、である。大成建設の足元を大きく揺さぶる事態が起きている。下請けからの逆襲だ。

 どういうことか。次ページでは、大成建設の土台を揺さぶる下請けの逆襲の内実をつまびらかにする。ポイントとなるのが大成建設が誇るエリート下請け集団の存在だ。この集団の動向いかんによっては、大成建設は売上高1兆円グループのスーパーゼネコンから陥落するかもしれないのだ。